バレエピアニストという職業について~6.

3件目のバレエスタジオは自己嫌悪の連続でした。「『○○』のグラン・パ・ド・ドゥをお願いします。」といきなり言われてもチンプンカンプンでした。

「申し訳ございません。勉強不足でわかりません。」とピアノの前で小さくなっていました。こちらが悪いのはわかっているのですが、先生の蔑むような態度はこたえました。

バレエ音楽のソロピアノ版はあることはありましたが、めちゃめちゃ高価で、揃えようと思ったら何日分ものギャラが吹っ飛んでしまいます。

私は主だった曲を何曲も耳コピしました。それからしばらくして「『白鳥の湖の黒鳥』をお願いします。」と言われた時は、努力が報われたと思いました。

先生はトッププリマとして活躍してきただけあって、相当プライドが高いのは有名でした。先生のダンサーに対するひどい言葉も、耳をふさぎたくなるほどです。育て上げた弟子達が、先生と衝突して何人も他のバレエ団に変わっていってしまったと耳にしましたが、無理からぬことだと思いました。

私は少ないギャラのために1時間以上かけてピアノを弾きに行くことが、だんだん苦痛になってきました。努力は精一杯しているつもりですが、何も報われないのです。ダンサー達との会話もままならず、バレエピアニストは機械扱いです。

ギャラにしても「初めのうちはすずめの涙だけど。」と期待させるような言葉でしたが、2年近く経っても一向に上がる気配はありません。「指の練習」「修業」とプライドを捨て我慢して通いましたが、孤独感がピークに達しました。このままここにいたらどんどん卑屈になると思いました。

やめる決心を伝えるためにもう一人のピアニストに連絡してみると、彼女は「他に収入のあてがないから、自分は我慢する。」とのことでした。

しかしこのスタジオで学んだことはたくさんありました。バレエについての知識の乏しさも身に沁みました。即興演奏やバレエ曲の研究などの経験を、他のスタジオで試したくなり、ネットでバレエピアニスト募集を探してみました。

そして半年後ようやくみつかり、私は4件目のスタジオへ面接に行きました。バレエピアニストのお話、まだまだ続きます。

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