はじめに

ピアノの発表会で良い演奏をするために欠かせない「暗譜」の方法やコツをご紹介します。効率的なやり方で隅から隅まで楽譜を覚えましょう。

暗譜は恐ろしい

演奏活動をしている身にとって、暗譜での発表会は悩みの種です。私にとっては、人生で最も恐ろしいことの一つと言っても過言ではありません。いつもは失敗しないにもかかわらず、本番で真っ白になった経験はありませんか?実はまだ暗譜が完璧ではなかったのです。また、私はピアノ講師(ピアノ教師)でもあるため、ピアノの発表会で生徒が楽譜を覚えきれていないことには大いに責任があると思っています。

暗譜をマスターする方法

「楽譜を覚える」「楽譜を覚えられているか」を突き詰める暗譜の18の方法をご紹介します。暗譜は決して簡単ではありません。時間をかけてコツコツ進めてください。

楽譜をコピーする
これから曲を暗譜するわけですが、楽譜に暗譜に関する様々なことを書き込みます。本に直接書き込むとピアノの先生の指導の妨げになる場合もあります。

暗譜用にコピーを取っておきましょう。たたんで鞄の中にも入れられるので携帯用にもなって便利です。

覚えにくい箇所にチェックを入れたり、楽譜を見て気がついたことも書いていきましょう。そのコピー譜はなくてはならないものになっていくはずです。

ただし楽譜には著作権の制限があるので注意して下さい。個人的に使用するものであれば大丈夫です。
まずは楽譜を見ずに弾けるようになる
これが暗譜の第一歩です。多くの方はこれが最終段階だと思っておられます。それが大間違い!

楽譜を見ずに弾けるようになってからが暗譜との長い戦いなのです。

ここに到達するまでにも練習に相当な時間を費やしていると思いますが、暗譜は弾く練習というよりも頭を使った練習です。

子供の発表会レベルならば、少なくとも本番の1か月前には楽譜を見ずに弾けるようになっていなければいけません。大人の方はもっとさかのぼります。
曲の構造を知る事がコツ
どんな小さな曲でも何らかのルールがあります。そのルールをまず見つけてコピー譜に書き込んでおきましょう。

例えばAのフレーズと似たフレーズをA’とします。AとA’はどこが違うのか?違うフレーズに発展していくのはどの音か?

これらを頭できちんと理解しましょう。きっかけとなる音や和音に印を付けていきます。そして特にその部分の楽譜を覚えるのです。

これが出来ていないと同じところをグルグル回るループ地獄に陥ります。

暗譜では似ている箇所が曲者なので、そこを重点的に覚えこむことがコツなのです。
指使いもしっかり覚える
音はわかっているのに指使いがわからなくなってしまうことがあります。経験上これは結構あります。普段からその場しのぎの指使いをしていると、こういう結果になりやすいです。

最良の指使いで練習するようにしましょう。

「ここで4の指に変えて」とか「この和音は1・2・5の指で」というように、音と一緒に指使いもきっちり頭に入れておくことが暗譜の助けにもなります。
弾いているときの手の形を頭に入れる
ピアノ演奏の場合、眼に入るのは鍵盤と手の形です。暗譜と平行して手の形も覚えて頭に入れておくと忘れにくくなります。

例えば「ここは左と右が同じように動く」とか、「ここは左と右が一番接近する」とか。何でもよいのです。

そう思いながら手の形を意識して弾くことによって安心感も得られます。
楽譜を「見る」ではなくて「読む」
ピアニスト仲間の友人にとにかく深く楽譜を読む人がいます。彼女曰く、弾くよりも読む練習が多い日もあるということです。

ピアノを弾くだけがピアノの練習ではありません。ピアノを弾けない状態でも色々な練習方法があります。楽譜を読むこともそのうちの一つです。

ただ楽譜を眺めているだけではなく、「曲の秘密を解き明かそう」くらいの勢いで楽譜を読みましょう。

ちなみに彼女が暗譜で失敗したことはありません。
片手ずつの暗譜は必要最低限
片手ずつ暗譜で弾けますか?右手は何となく出来ても、左手ができていないことに愕然とするでしょう。

両手で弾いているときはメロディを聴く事を重視しているので、内声や伴奏を聞くのが疎かになっています。

片手ずつ弾いてみると、今まで通り過ぎてきた全ての音が頭に入ってきます。まだ暗譜には遠いと感じるでしょう。

ちなみに左手は右手の3倍練習が必要だと言われています。弾かない方の手は音を出さなければ鍵盤の上に乗せていてもかまいません。

片手ずつ楽譜を覚える練習はぜひやってみてください。
縦割り練習~4小節ごとに弾いてみる
「ここから弾いて下さい。」と先生に言われて軽くパニックになり、結局相当前から弾いたりすることはありませんか?楽譜を見ながらでも途中から弾くのは難しいです。相当弾きこんでいないとできません。

縦割り練習をしてみましょう。

まずは4小節ごとに弾いてみます。4小節がワンフレーズになっている曲が多いので4小節ということにしましたが、そうでない場合はフレーズごとに分けても良いです。

4小節暗譜で弾いたら一度膝の上に手を置いて、数秒開けた後に、先ほどの続きから弾く練習をします。

膝の上に手を置くというのは一旦全ての音楽をリセットするということです。鍵盤上に手を置いて待つのでは、あまり効果がありません。手は必ず膝の上に置いて下さい。

4小節単位が出来れば、次は2小節ごとに切り替えます。それが出来れば1小節ごとにします。

全てが和音で出来ているようなフレーズでは和音⇒膝の上⇒和音というやり方も良いでしょう。
縦割り練習~1小節飛ばしで弾いてみる
1小節飛ばしで曲を弾いてみます。音のない1小節を自分の頭の中で鳴らすやり方です。

チューリップの曲を例にあげると、1小節目「ドレミー」と弾いて手を膝の上に置き、2小節目「ドレミー」を弾かずに3小節目「ソミレド」を弾くのです。つまり「ドレミー」(ドレミー)「ソミレド」(レミレー)という具合に、カッコの中は弾きません。

奇数小節が弾けたら今度は偶数小節だけを弾いていきます。

この方法で、縦割りでの暗譜がかなり進みます。
縦割り練習~言われた所から弾いてみる
この方法は、ピアノを弾ける方の協力が必要です。

曲の一部(和音など)を弾いてもらって、その場所から弾きます。

普通ピアノを弾いているときは、実際の音を聴きながら、頭では常に次の音の事を考えています。つまり次の音の響きが頭の中で鳴っているのです。

これはその流れを断ち切って、その音の響きだけで続きを弾くことができるかどうかを確かめる方法です。

これができると、どこからでも弾けるようになります。

1人でのやり方は、曲を頭の中で鳴らして思ったところから弾くことになりますが、かなり暗譜の練習を積んでいないとできないと思います。
超ゆっくり弾く
この方法も暗譜の練習に不可欠です。

どれくらい「超」かというと、曲の形態がなくなるほどの「超」です。自分でうんざりするほどゆっくり弾いてみてください。

なかなかできないと思うのでメトロノームを使うと良いでしょう。時間がかかって面倒なのですが、やってみるだけの値打ちは十分あります。

全部を一度にやると他の練習ができないので、毎日少しずつでかまいません。

ゆっくりなのでぼーっと弾かないように、神経を研ぎ澄まして暗譜できているか、確認しましょう。
目を閉じて弾く
視覚を遮断して弾いてみましょう。

速さは、さほど重要ではありません。間違った音を弾いてしまったときは、目を閉じたまま音を探し当てます。

このやり方で音が本当に頭に入っているかどうか、暗譜できているかどうかがわかります。

目を閉じて弾くときに楽譜を思い浮かべることが出来れば尚良いです。楽譜に書き足した注意書きを思い出すだけでも良い傾向です。

目を閉じても音の跳躍が出来ていたら、これはかなり弾きこんでいるということです。出来るまで練習すると安心度が増します。

「音を忘れそうになっても手が勝手に動いてくれる」というのは理想ですが、緊張感の中ではなかなかそうは行きません。

目を瞑ると少し落ち着くのは確かです。落ち着くためのコツとして部分的に目を閉じて弾くのも良いと思います。
脳内暗譜
これはいつでもどこでも、どの段階でもできる暗譜の方法です。

寝る前や電車の中が特に良いでしょう。目を瞑って指は最小限に動かします。

わからなくなったら楽譜を見て下さい。わからなかった箇所はコピー譜に印を付けておきましょう。

暗譜をしているからといって楽譜を全然見ないのは大間違いです。楽譜が写真のように思い浮かべられるくらいにしっかり覚えましょう。
机上暗譜
鍵盤のないところでピアノを弾いてみます。

試しにテーブルの上でやってみて下さい。曲想も付けながらイメージしましょう。

頭の中と指の感覚で自分がどの音を弾いていて、どの指でどんな音を出そうとしているかということを意識します。

これは相当難しく、すべての音が確実に頭に入っていなければできません。

これはピアノがなくてもできる高度な暗譜の練習です。
弾く曲の楽譜を書いてみる
実際にするとなると膨大な時間がかかりますが、心配で夜も眠れないという人はやってみましょう。

まるごと1曲でなくても机上暗譜などで出来なかった所だけで十分です。

ただし楽譜の知識も必要です。
暗譜カードを作る
縦割り暗譜の進化形です。

フレーズごと(4小節など)にA,B,C,...で分けていきます。それをコピー譜に書き込みましょう。

次に紙でカードを作ります。小節ごとにA-1、A-2、というように分けて、カードに書き込みます。

それをくじ引きのように袋から取り出して、出たカードの部分を弾いてみます。例えばF-3ならば、Fフレーズの3小節目を弾きます。

全く同じ音のフレーズは飛ばしてもかまいません。大曲になると、A,B,C,...だけでは足りなくなってくるので色々工夫してみてください。
逆奏してみる
曲の最後の小節から始めに向かって1小節ずつ戻って弾いていきます。

例えばW-4,W-3,W-2,...,A-2,A-1のようにです。カード暗譜を極めればできるようになります。

ここまで覚えると完璧です。これが究極の暗譜だと思います。
暗譜ができていない事にうんざりする時
ここまで色々な方法で暗譜の練習をしてきて、暗譜が出来ていないところがボロボロ出てきましたね。

ガッカリするのではなく暗譜が出来ていないところが見つかって良かったと思って下さい。おそらくそこが本番失敗していたかもしれない可能性が高い所なのです。

楽譜を覚える練習とは出来上がった建物をコツコツ叩いてみて、ボロっと壁が剥がれ落ちたところを補修して強く立派にしていくイメージです。

もちろんその練習は頭を使って神経を研ぎ澄ましています。知らず知らずのうちに演奏も磨かれていると思います。

人によっては向き不向きがあると思うので、自分に合う順番でチャレンジして下さい。

本番の成功をお祈りしています♪