2023年 チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門 ~速報!マルセル田所さん 二次審査の演奏
2023年6月22日の第一次審査の結果発表の後、25名から15名に絞られた第二次審査が、翌日6月23日よりはじまりました。
マルセル田所さんは第1日目、黒岩航紀さんは第2日目です。
マルセル田所さんの二次審査のプログラムと曲解説、感想をまとめました。
マルセル田所さんの二次審査のプログラムと曲解説
スヴェトラーノフ 12 の前奏曲より 第1番 「モデラート」
まさに後期ロマン派の作品です。
カンタービレ(歌うように)の指示通り、壮大でロマンティックな音楽は映画の世界に入ったかのようです。
スヴェトラーノフ 12 の前奏曲より第9番「ヴェスニャンキ」
メリハリのあるスタッカートが民族調の旋律を奏でます。
重厚な和音の場面と交差しながら、クライマックスを迎えます。
スヴェトラーノフは指揮者としても有名で、いつも指揮台の横に愛用の赤い扇風機を回しながら指揮をしていました。
彼の指揮した交響曲のCDには、「扇風機の音も入っています」という注意書きもあったそうです。
スクリャービン 3つの練習曲 Op.65
神秘主義や前衛音楽を意識した作品で、3曲とも重音を使った練習曲です。
1曲目は長9度、2曲目は長7度、3曲目は完全5度が多く登場します。
ラフマニノフ コレッリの主題による変奏曲 Op.42
主題と20の変奏からなり、ヴァイオリニストのクライスラーに献呈されました。
コレッリはJ.S.バッハとほぼ同時代に生きた、イタリアのヴァイオリニストです。
コレッリ作曲の「ラ・フォリア」の主題が元になっていますが、フォリアというのはイベリア半島の舞曲だそうです。
チャイコフスキー ソナタ 嬰ハ短調 Op.posth.
この曲が作曲された年は、チャイコフスキーがまだサンクトペテルブルク音楽院の学生の頃でした。
しかし、生前には世に出されることがなかったため、遺作となっています。
シューマンの影響を強く受けている作品です。
第1楽章
Allegro con fuoco 4/4拍子 嬰ハ短調
第2楽章
Andante 3/4拍子 イ長調
第3楽章
SCHERZO, Allegro vivo 3/8拍子 嬰ハ短調
第4楽章
Allegro vivo 2/2拍子 嬰ハ短調
シャルル・トレネ ワイセンベルク編曲 『6つの歌』より「パリの4月」
シャルル・トレネはフランスのシャンソン歌手で作曲家です。
ワイセンベルクはブルガリア出身の卓越したピアニストで、カラヤンとの共演でも有名でした。
マルセル田所さんの演奏
0:23:53辺りから審査員のお顔が映りました。
後ろ1列が空いているだけで、ほとんど客席の中に埋もれておられるといった印象です。
マルセル田所さんの演奏前の舞台裏の様子は0:23:12 辺りからです。
横で読み上げられるプログラムのアナウンスに相槌を打ちながら立っておられました。
ピアノは第一次審査と同じくヤマハです。
演奏は0:24:40 辺りからです。
スヴェトラーノフの作品はとても素敵でしたが、はじめて聴かれる方も多いのではないでしょうか。
今回のマルセル田所さんの選曲は、一般的に耳なじみのない曲が多いので、どんな曲か楽しみでした。
スクリャービンの第1曲目は9度の重音の連続が息を飲むように続きます。
9度というのはオクターブ以上のド~レまでのことです。
スクリャービンは学生時代に友人と、超絶技巧の難曲を制覇する競争をしていました。
比較的手が小さかったスクリャービンは、右手首を故障してしまったのでピアニストの道を断念し、作曲活動に専念します。
晩年にこのような練習曲を作るのは、聞いていてピアニストへの挑戦状のような気がしました。
もちろん手の大きなマルセル田所さんは軽々と弾いておられました。
ラフマニノフはシンプルな主題からどんどん華やかに発展していきますが、これでもかというくらい超絶技巧が続きます。
リサイタルなどではこのようなプログラムであれば休憩がありますが、これほどの大曲を弾いたすぐ後にソナタもあり、その体力と精神力は神業と言えるでしょう。
重厚なソナタのあと、丁寧にお辞儀をされ、最後の曲に入られました。
曲間のお辞儀の際にもスーツのボタンをキッチリとめられるところが、お人柄が表れて好感が持てます。
最後の曲はフランス人作曲家の曲です。
シャンソンをアレンジした、今までとはガラッと変わった軽いタッチのお洒落な曲です。
お母さんがフランス人のマルセル田所さんは、この原曲をもともと知っておられたのかもしれませんね。
迫力満点な曲でスパッと終わるのもカッコいいですが、このようなしっとりとした終わり方も素敵です。
ブラボーの声援も上がりました。
黒岩航紀さんの二次審査は、6月24日、日本時間の深夜1時頃からです。
子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。