【新課題曲】幻想ポロネーズとは?ファイナルの勝敗を左右する名曲を徹底解説!〜第19回ショパン国際ピアノコンクール
第19回ショパン国際ピアノコンクールでは、伝統的にファイナルで演奏されてきたピアノ協奏曲 第1番 Op.11 または ピアノ協奏曲 第2番 Op.21のいずれかに加え、幻想ポロネーズ Op.61がファイナリスト全員必須の課題曲として追加されました。
これによりファイナルは、「独奏曲《幻想ポロネーズ》+ピアノ協奏曲」という二部構成となります
今回は、幻想ポロネーズについて、いったいどんな曲なのか?
作曲背景から曲解説
英雄ポロネーズとの比較
歴代巨匠のアプローチ
などなど、様々な観点で深堀りしていきます。
この作品が、優勝の行方を左右する鍵になりそうです!
幻想ポロネーズとは
幻想ポロネーズ Op.61は、ショパン晩年の傑作です。
ショパンは1839年から恋人ジョルジュ・サンドと別れる1846年まで、7回の夏をノアンの館で過ごしました。
なお、ノアンの館はフランス中部にあり、ジョルジュ・サンドの父方の実家です。
そこはショパンにとって、社交界での複雑な人間関係から解放される一種の安全地帯であり、パリの喧騒を離れて作曲に没頭できる創造のアトリエでした。
幻想ポロネーズは、ノアン滞在の最後の年に作られています。
ちなみにショパンは36歳。
この年に作曲された「幻想ポロネーズ」と「舟歌」が独奏曲の最後の大曲で、どちらもショパン自身の全作品中でも“最高傑作の一つ”と評されます。
この頃はショパンの健康状態も悪く、ジョルジュサンドとの関係は険悪な状況にあったと言われています。
タイトル「幻想ポロネーズ」が示す通り、この曲はポーランドの舞曲であるポロネーズの形式と幻想曲的な自由さを融合した独創的な作品です。
ショパン自身、当初は題名を「幻想曲」として構想しており、厳格な舞曲というより自由な発想で作曲しました。
実際、伝統的なポロネーズの勇壮なリズムは曲中に断片的に顔を出す程度で、構成はむしろ幻想曲に近く、夢の中をさまようような展開を見せます。
そのため、初めて耳にした人には掴み所がなく思えることもありますが、これこそが作品の題名「幻想ポロネーズ」のゆえんです。
ショパンは全部で遺作を含めて18曲のポロネーズを書きました。
その中でもOp.61「幻想ポロネーズ」は特異な位置を占めます。
ショパンは39歳でこの世を去りますが、もしもショパンがもっと長生きしていたとしたら、幻想ポロネーズはショパンの新しい作風のはじまりとなったかもしれません。
よく比較されるOp.53「英雄ポロネーズ」は1842年作曲の代表作で、力強いオクターブ連打や華やかな曲調からショパンの愛国心を象徴する名曲として人気があります。
それに対し、幻想ポロネーズはより晩年の1846年作で、英雄ポロネーズに負けず劣らず規模は大きいものの、表向きの華やかさより内面的なドラマに重きがおかれています。
英雄ポロネーズが冒頭から勇壮なファンファーレで始まり終始高揚感に満ちていて情熱的に展開するのに対し、幻想ポロネーズは静かな序奏に始まり、じわじわと感情を盛り上げていく構成です。
いわば、英雄ポロネーズは外に向かう音楽であり、幻想ポロネーズは内に向かう音楽であると位置付けられます。
幻想ポロネーズの演奏時間は約12~13分ほどで、長大かつ内容的にも充実した構成です。
歴代巨匠のアプローチ
幻想ポロネーズは音色の緻密なコントロールと詩的センスが要求されるという難しさがあり、演奏者の解釈によって大きく表情を変える曲として知られます。
この曲の価値を広めたピアニストの一人がアルトゥール・ルービンシュタインです。
ルービンシュタインの演奏は「男性的で骨太な解釈が貫かれていて聴きごたえがある」と評されるように、力強く健康的なショパン像を打ち立てました。
同時にルービンシュタインはショパンへの深い愛情と共感を持ってこの曲に臨み、聴き手を優しく作品の深奥へ誘う詩情も兼ね備えていました。
骨太さの中にもところどころ翳りが差すようなニュアンスが表現され、ショパンの秘めた苦悩や陰影までも浮かび上がらせています。
これに対し、マウリツィオ・ポリーニの演奏解釈は構造の明晰さと揺るぎない安定感で知られます。
シャープで迷いのない強靭なフォルムを持ち、ローカルな色付けを排した明晰で力強い演奏と評価されています。
幻想ポロネーズでも過度にロマンティックに崩すことなく楽譜の構造を精密に再現しています。
テクニック的難度
幻想ポロネーズはしばしば「ショパンの中でも随一に難しい曲」の一つに数えられます。
2015年大会(前々大会)の覇者であるチョ・ソンジンはショパンの作品の中で難度の高い作品として「バラード第4番」「幻想ポロネーズ」「24のプレリュード」を挙げています。
実際、高度なテクニックを要するのはもちろんですが、単に指が回るだけでは弾きこなせない音楽的成熟が求められる点が難しいです。
華麗なパッセージや強烈なオクターブ連打など派手な技巧も含まれますが、それ以上にこの曲では緩急や強弱の幅が極端に大きく、繊細な弱音コントロールから成熟したフォルテッシモまで、多彩なタッチを使い分けねばなりません。
また前述のように構造が複雑で、一見脈絡のない場面転換が続くため、演奏者は曲全体の物語を再構築するセンスを試されます。
巨匠マルタ・アルゲリッチも
「若いピアニストがこの曲を演奏するのは容易ではない」
と幻想ポロネーズについて言及しています
実際、コンクールでも敢えてこの曲を選ぶ出場者は少ない傾向があります。
しかしその困難さゆえ、見事に弾き切った時の評価は非常に高いです。
技巧と詩情の両立というショパン演奏の究極命題が凝縮されたこの曲は、ピアニストにとってまさに腕の見せ所であり、同時に真価が問われる挑戦曲と言えるでしょう。
ファイナルが楽しみですね。
まとめ
第19回ショパン国際ピアノコンクールでは、ファイナルに幻想ポロネーズが必須の課題曲として追加されました。
幻想ポロネーズはショパン晩年を象徴する自由度の高い大作で、演奏者の構成力と詩情が試されます。
歴代巨匠もアプローチが異なり、ファイナルではコンテスタントの「物語力」が勝負の鍵です。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











