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【溢れる歌心】吉見友貴さん、エリザベート第1次で発揮された表現力と色彩感〜エリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門2025

2025.05.06

エリザベート王妃国際音楽コンクール、第1次予選に出場された吉見友貴さんの演奏についての感想をお届けします。

吉見さんは、5月5日(月)深夜3時からの部に登場され、当日指定された次の曲を演奏されました。

ハイドン作曲:
ソナタ 第60番 第1楽章 ハ長調 

リゲティ作曲:
エチュード 第10番「魔法使いの弟子」

リスト作曲:
超絶技巧練習曲 第12番「雪あらし」変ロ短調

ショスタコーヴィチ作曲:
24のプレリュードとフーガ Op.87-15 変ニ長調

特に注目していたのは、吉見さんの確かな技術力と表現力です。

吉見さんの演奏の特徴は、ピアノを「歌わせる」表現力と、多彩な音色にあります。

楽譜に忠実でありながらも、自分なりの解釈を大切にする姿勢が際立っています。

「演奏家よりも『音楽』が上にいないといけない」

という言葉を残されており、自身を前面に出すよりも、作曲家が遺した音楽そのものを届けることを大切にしておられます。

吉見さんは、2021年のエリザベート王妃国際音楽コンクールではセミファイナルまで進出されました。

4年間の研鑽を経て挑むエリザベートで、どのような演奏を聴かせてくれるのか、大変注目していました。

なお、本番の演奏は、エリザベート公式サイトにアップされます。

下記からぜひご確認ください。

エリザベート公式の吉見友貴さんプロフィールページ

エリザベート公式の動画一覧ページ

※動画がアップされるまで少しタイムラグがあるようです

以降に私の感想が続きます。

演奏を聴いた感想

演奏前にハンカチを鼻に当てておられましたが、きっと落ち着く香りがハンカチに沁みこませてあったのでしょう。

ゆっくり間を取ってから弾きはじめられました。

ハイドン作曲:ソナタ 第60番 第1楽章 ハ長調

まず最初にハイドンの作品の表し方が少々ややこしいので、説明させていただきます。

エリザベートのプログラムには「Hob. XVI:50」とあります。

Hob.はハイドン独自の作品番号で、ホーボーケンと言います。

XVI は膨大な作品を整理するためのハイドン独自のジャンル分けで、XVI(16)はピアノソナタです。

また、現在はウィーン原典版の編纂(へんさん)が一般的なので、この曲は第60番として知られています。

今回の課題は第1楽章のみとなっています。

とても明るく瑞々しい作品です。

吉見さんの演奏は、1音ずつしっかり考えられた明瞭なタッチで、隅々まで素晴らしかったです。

音色が、あるときはヴァイオリン、あるときはチェロというように、まるでオーケストラを聴いているかのようでした。

ハイドン自ら指示した2か所のオープン・ペダルが有名で、その表現は演奏者によって様々なのも見どころです。

吉見さんのオープン・ペダルのフレーズは、音の濁りを計算しつくした美しいppで、一時の静寂が効果的でした。

リゲティ作曲:エチュード 第10番「魔法使いの弟子」

タイトルからして難曲であることは一目瞭然ですね。

全ての音を鍵盤の底までタッチすることさえ難しい曲です。

しかも弾きなれないピアノで、鍵盤の跳ね返りなどを計算して高速で弾くのは至難の業でしょう。

吉見さんの演奏は強弱の幅が豊かで安定し、聴きごたえがありました。

小さな粒がたくさん転がってきて、だんだん大きな何かに変化していく様子や、万華鏡のように美しく変化する景色が見事に表現されていました。

リスト作曲:超絶技巧練習曲 第12番「雪あらし」変ロ短調

この曲は2021年の前回大会でも演奏されました。

内声のトレモロや半音階で自然の厳しさを表現しながら、残った指で跳躍に挑み戦っていくという超難曲です。

吉見さんの拍感は安定しており、全くブレません。

ppからffまで多彩な音色で圧倒されました。

特に気品ある静けさの中に秘めた情熱を感じられるトレモロや、ppでもトレモロの声部とメロディーを弾き分けるテクニックは素晴らしかったです。

最後の音が終わらないうちに会場から拍手が沸き起こりました。

ショスタコーヴィチ作曲:24のプレリュードとフーガ Op.87-15 変ニ長調

この曲はJ.S.バッハの「24のプレリュードとフーガ」に敬意を表して作曲された曲集の第15曲です。

プレリュードはアクセントが丁寧で、同じ短めの音でもハイドンと全く違う音色です。

フーガは頭脳戦のような難解な曲ですが、各声部が非常に明瞭でわかりやすかったです。

特に左右の手が重なって交代して弾くところが難しいと思いますが、スッキリと弾かれ見事でした。

全体的な印象

ショパン国際ピアノコンクールの予備審査を通過しておられましたが、予備予選を取りやめてエリザベートに集中して臨まれた吉見さん。

2021年の演奏も素晴らしかったですが、今回は体格も一回り大きくなられ、より一層音に磨きがかかりました

今回の本番で演奏された曲の他に、

ショパン作曲:
エチュードOp.10-2 イ短調

スクリャービン作曲:
エチュード Op.42-5 嬰ハ短調

を用意されていましたが、ぜひ聴いてみたいですね。

ロマンチックな曲も、セミファイナルで期待したいです!

将来への展望

吉見さんは将来について、「ヨーロッパで勉強したい」と語っておられます。

クラシック音楽の本場で伝統ある文化に囲まれて勉強することに、憧れを抱いておられるようです。

演奏活動をする中で最も大切にしていることを尋ねられた際には、

「強い信念を持つこと。そして本物の音楽家でい続けることを大事にしたい」

と語られています。

エリザベート第1次予選では、吉見さんの音楽に対する揺るぎない姿勢が伝わってくる素晴らしい演奏でした。

まとめ

吉見友貴さんのエリザベート第1次予選の演奏の感想をお伝えしました。

今後も、エリザベートの注目ピアニストたちの演奏の感想をお届けしていく予定です。

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物書きピアニスト

子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。

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