【採点まとめ】牛田智大さん、涙を飲んだ0.14点〜第19回ショパン国際ピアノコンクール 審査結果
第19回ショパン国際ピアノコンクールの採点結果が公開されています。
牛田智大さんの、あと0.14点。
その差が、舞台袖で待っていた“もう一度の出番”を連れ去ってしまいました。
数字は残酷に見えますが、ここに至るまでの道のりを丹念にたどると、評価の揺らぎと審査員の個性、そして牛田さんが示した“通過力”の強さが、驚くほど立体的に見えてきます。
今回は、審査員ごとの採点の特徴を具体的な数値で示しながら、牛田さんの1次・2次・3次予選の歩みを一つの物語として結びます。
採点方法の確認
第19回ショパン国際ピアノコンクールでは、各審査員が1〜25点の整数で演奏を評価します。
点数の目安は、
25=完璧
23–24=卓越
18–22=とても良い
16–17=良い
12–15=ふつう
6–11=物足りない
1–5=不十分
とされています。
そして平均点を求めて、平均から外れすぎる点数は、1次では±3点、2次・3次・ファイナルでは±2点の範囲に補正されます。
補正後に再度平均点を計算し、その点数が各ラウンドでの結果となります。
合否や最終的な順位は、過去のラウンドの点数も考慮されます。
具体的には、
2次予選から3次予選への進出を決める際には、1次予選の点数30%、2次予選の点数70%が合算され、その点数が大きい順に3次予選進出となります。
ファイナル進出を決める際は、1次・2次・3次の点数が、10%、20%、70%で合算されます。
そして、最終結果を決める際は、1次・2次・3次・ファイナルの点数が、10%、20%、35%、35%で合算されます。
採点結果はショパンコンクール公式サイトでPDFで公開されています。
ぜひダウンロードしてご覧ください。
審査員の厳しさを可視化
ラウンドごとの採点結果を眺めていると、あるコンテスタントに対しては非常に高い評価をし、また別のコンテスタントには非常に厳しい評価をする、つまり、点数の上下幅の大きな審査員とそうでない審査員がいることに気がつきます。
審査員ごとの上下幅「そのラウンドで付けた最高点−最低点」を原点ベースで集計すると、誰が広いレンジで差をつけるのか、誰が狭いレンジで収めるのかがはっきり見えてきます。
1次予選での審査員の具体的な上下幅は次の通りです。
1次予選で上下幅が大きい審査員
ギャリック・オールソン:16(8〜24)
ジョン・アリソン:15(9〜24)
ネルソン・ゲルナー:13(12〜25)
ヴォイチェフ・シヴィタワ:13(12〜25)
1次予選で上下幅が小さい審査員
ユリアンナ・アヴデーエワ:7(18〜25)
サ・チェン:7(17〜24)
児玉桃:8(17〜25)
1次予選での全審査員の平均上下幅:10.53
2次予選で上下幅が大きい審査員
エヴァ・ポブウォツカ:13(12〜25)
ギャリック・オールソン:9(16〜25)
ジョン・アリソン:9(15〜24)
ネルソン・ゲルナー:9(16〜25)
ピオトル・パレチニ:9(16〜25)
カタジーナ・ポポヴァ゠ズィドロン:9(15〜24)
ジョン・リンク:9(16〜25)
2次予選で上下幅が小さい審査員
ユリアンナ・アヴデーエワ:4(20〜24)
サ・チェン:5(19〜24)
2次予選での全審査員の平均上下幅:8
3次予選で上下幅が大きい審査員
エヴァ・ポブウォツカ:10(14〜24)
ギャリック・オールソン:9(16〜25)
3次予選で上下幅が小さい審査員
ユリアンナ・アヴデーエワ:2(20〜22)
児玉桃:4(20〜24)
ピオトル・パレチニ:5(18〜23)
ヴォイチェフ・シヴィタワ:5(19〜24)
3次予選での全審査員の平均上下幅:6.65
ラウンドが進むにつれて参加者のレベルが揃っていくため、審査員の平均上下幅は1次→2次→3次で縮小していきますね。
その中でも、エヴァ・ポブウォツカ、ギャリック・オールソン、ジョン・アリソンの3名は全ラウンドで大きなレンジを維持し、演奏間の差をはっきり点差で表すタイプであることが数字から読み取れます。
反対に、児玉先生やサ・チェン、ユリアンナ・アヴデーエワは相対的にレンジが小さく、評価がコンパクトに収まる傾向です。
牛田智大さんの1次予選の審査結果
評価が二極化しつつも通過力を示しました。
本大会1次予選では、牛田さんの評価ははっきり二分しました。
満点に近い24点を3名から獲得している一方で、19点以下の審査員が6名います。
最低点はジョン・アリソンの16点でした。
16点は低めの部類で、やはり次のラウンドに進むには21点以上はほしいところです。
牛田さんの1次予選の採点を詳しく見てみましょう。
牛田さんはパレチニに師事しているので、パレチニは採点できません。
16〜24点が16名の審査員によって付けられました。
全点数を合算し、平均値を出すと20.75です。
この点数のプラス3、つまり23.75が牛田さんの最高点になります。
24点が23.75点に補正されました。
同じく、マイナス3、つまり17.75が牛田さんの最低点となり、16点は17.75に補正されています。
17.75〜23.75内の点数は調整なしなので、もう一度各点数を合算して平均値を出した結果、20.81が牛田さんの1次予選の点数となりました。
20.81点は84名中20位で、2次予選進出を決めました。
上位40名の幅は3.34点です。
ここからすでに“1点の重み”がのしかかっていたことがわかります。
牛田智大さんの2次予選の審査結果
満点と強い支持を得つつ、レンジ広めの厳評も混在しました。
2次予選の牛田さんは、ミシェル・ベロフから25点満点を獲得し、24点評価も2名から得るなど、特定の審査員から強い支持を引き出しました。
その一方、レンジを広く使う審査員からは19点以下の評価もいくつか付与され、全体としては21.08になりました。
合否を決める1次30%+2次70%の合算でも中位を確保し、通過力の高さが印象づけられます。
2次予選の採点は21.00で、40名中12位で3次予選に進みました。
接戦であるがゆえに、個別の高得点が平均を押し上げ、個別の厳評が引き下げるという綱引きが、より大きく結果に響く段階でした。
牛田智大さんの3次予選の審査結果
「天井」が不在と、時間超過が痛かったです。
3次予選では、牛田さんの点数は19点が2名だけで、ほかは20点以上でしたが、1次・2次であった24点、25点の高得点が“ゼロ”でした。
結果として、3次予選の平均は20.58にとどまり、1次・2次の点を加味した合算は20.70。
そして、第11位と0.14点差で、20名中13位でファイナル進出なりませんでした。
3次予選は45分〜55分の演奏プログラムという厳格な規定がありましたが、牛田さんの演奏は約4分半ほどオーバーしていました。
時間超過の場合、審査員が演奏を途中で止める場合もありますが、牛田さんの演奏は最後までおこなわれました。
それが具体的にどの程度の減点に繋がったのか、あるいは審査員がどのように判断したのかは公表されていません。
しかし、コンクールですので、規定からの逸脱は審査員の評価に影響を与える可能性は十分にあります。
時間超過したコンテスタントの点数がもし満点であれば、時間の規定は何だったの?ということになります。
実際の配点は、21、20、21、21、21、19、20、19、22、20、20、23、s、20、23、20、20でした。
なお、パレチニに習われているため、パレチニは「s」となり採点に加われません。
牛田さんは、1次2次では24点以上の点数を獲得できていましたが、このラウンドではその点数を付けた審査員はいませんでした。
最高点の23点は補正で22.63点になります。
最低点の19点は補正の対象外なので、そのままです。
約5分半の「前奏曲 Op.45」がなかったら時間的にはバッチリだったと思うのですが、牛田さんの、プログラムに対する譲れない思いがあったのでしょうか。
素晴らしい演奏だったのに24点以上がなかったのは、やはり時間オーバーが原因とどうしても考えてしまいますね。
まとめ
大会全体を振り返ると、ラウンドが進むほど上下幅の平均は縮み、同時に1点の価値が大きくなっていきました。
エヴァ・ポブウォツカ、ギャリック・オールソン、ジョン・アリソンのように、上下幅が常に大きい審査員は、演奏の“際立ち”を大きく点差に反映させます。
児玉先生やサ・チェン、ユリアンナ・アヴデーエワのように、上下幅が小さい審査員は、評価をコンパクトにまとめるという評価軸の違いを一貫して見せました。
牛田さんについては、1次・2次で示した通過力の高さに加え、2次の満点や24点が語るように強い支持を複数の審査員から引き寄せた事実が、何よりも心強く感じられます。
3次では「天井」が不在で、0.14点という紙一重でファイナル進出を逃しました。
すばらしい演奏だったのは間違いありませんので、どうしても悔しさは残ります。
牛田さんが望むのなら私はもう、次の舞台でその続きを聴く準備ができています。
引き続き、応援させていただきます!
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











