【緊急】牛田智大さんの演奏プログラムを徹底解説〜本大会3次予選編|第19回ショパン国際ピアノコンクール
牛田智大さんが前回大会のリベンジを果たし、本大会3次予選に進まれました!
以前からの大ファンとしては、とても嬉しい気持ちです。
今大会の3次予選は、最終結果に大きく影響してきます。
ここは本当に勝負どころです!
さて、1次予選、2次予選同様、3次予選の演奏プログラムの解説を用意しました。
曲のことがよく分かると、演奏を聴くのがより楽しくなると思います。
ぜひ最後までご覧ください!
プレリュード 嬰ハ短調 Op.45
「プレリュード 嬰ハ短調 Op.45」は、短いけれど深い余韻を残す、一人芝居のような作品です。
ショパンはすでに「24のプレリュード Op.28」を書き終えていましたが、この曲は単独で作られた、もうひとつのプレリュードです。
ため息のように始まる旋律が、ほの暗い嬰ハ短調の空気を作ります。
やがてアルペジオが少しずつ明るみに向かい、右手の音域が高くなるにつれて感情が高まります。
途中には、雲間から光が差すように長調の色がちらりと見える瞬間があり、そこで音楽はふっと開きます。
クライマックスでは厚みのある和音が鳴って気持ちが大きく揺れますが、長くは居座らず、すぐに余韻へと退いていきます。
落ち着いたテンポの中で、右手が人の声のように旋律を歌い、左手は穏やかな波のように和音を揺らして支えます。
ずっと歌が流れているのに、景色だけがゆっくり変わっていく車窓の旅と捉えると、ぐっと聴きやすくなります。
耳を澄ますほど魅力が立ち上がってくる
そんな音楽を作るのは牛田さんの得意分野ではないでしょうか。
色彩的な進行が次々と現れては、にじんで溶けていく美しさを味わってください。
マズルカ Op.56-1~3
「マズルカ Op.56-1〜3」は、ショパンの33歳頃の作品です。
三拍子の民族舞曲「マズルカ」を材料にしながら、ほとんど詩のような短編を三つ並べたセットです。
ここで、ショパンのマズルカについて、もう一度簡単にご説明させていただきます。
ポーランドには5つの民族舞曲があり、その一つがポロネーズです。
ショパンはあとの4つの中から、マズール・オベレク・クヤヴィアクという3拍子の舞曲を組み合わせることによって、マズルカという舞曲を誕生させ、芸術的に高めました。
マズルカは3拍子の中で2拍目や3拍目に重心が来る独特のノリがあり、その「少しよろめく感じ」をピアノで優雅に描き出すのが聴きどころです。
第1番 ロ長調は、
Aの場面が現れては、色違いの場面にふっと移り、またAに戻る
そんなロンドの仕掛けで進みます。
同じ踊りが、日差しの角度を変えながら何度も現れるように響きます。
左手は、ときどき後ろ足で “タッ” と床を踏むようにアクセントを置き、右手は、息を吸ってからふわりと歌いだす、呼吸の気持ちよさを味わってください。
第2番 ハ長調は、3曲のなかでいちばん短く、速さと軽やかさを楽しめる曲です。
拍の重心が2拍目や3拍目に寄るマズルカ特有の揺れが、ただの速い曲に終わらせません。
右手の簡潔なモチーフが何度も顔を出し、左手が小気味よくステップを刻む、その反復が癖になる心地よさです。
第3番 ハ短調は、物思いにふけるように始まり、言葉を選びながら語るように進む、歌うマズルカです。
中低音の温かい和音に寄りかかり、旋律がためらいがちに前へ進みます。
踊りの面影は残しつつも、ステップは内省的で、終盤はふっと灯りが落ちるように静けさが広がります。
3拍子のゆらぎの上で、音が少し遅れて着地したり、逆に前のめりになったりする伸び縮みも感じやすいです。
深呼吸するつもりでフレーズの始まりと終わりに耳を傾けましょう。
幻想曲 ヘ短調 Op.49
「幻想曲 ヘ短調 Op.49」は、ショパン31歳頃に書かれた傑作です。
題名が示すとおり、厳密な決まりごとから意図的に離れて、自由な語り口や即興の息づかいを前面に出したロマン派らしい曲想が魅力です。
一方、音楽の骨格は整理されていて、ソナタ形式の発想を持っているとも言えます。
演奏時間は約13分。
短い小品では味わえない、物語のような起伏とスケール感を体験できます。
冒頭に現れるのは、静かで荘重な行進の足取り。
低音の和音が一歩ずつ大地を踏みしめるように進み、やがて熱がこもって速度も気分も少しずつ高まっていきます。
ほどなく現れる激しい流れでは、右手の旋律が息継ぎを忘れるほど切迫し、左手の連なりが心臓の鼓動のように音楽を押し出します。
曲の半ばでは、時間がふっと止まったように感じられる場面が訪れ、聖歌のような穏やかなハーモニーが静かに奏でられます。
そこから再び勢いが戻り、終わり近くではひととき甘いささやきも挟みますが、最後は晴れ渡るような教会音楽風の終止で締めくくられます。
まるで「アーメン」と祈っているようで印象的です。
こうした道のりは、最初の陰りを保ちながらも希望の光へ向かう長編小説の結末のように感じられるでしょう。
牛田さんの「幻想曲」はすでに有名で、人気が高いです。
「行進」「熱情」「祈り」「希望」という性格の違う場面がどのように表現されるのか
ワクワクしますね。
ピアノソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
「ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58」は、ショパン34歳頃に完成した大作です。
このソナタはショパンが夏のあいだ多くの名作を書いた、恋人ジョルジュ・サンドの別荘、ノアンでの成果のひとつです。
同時期に「バラード第4番 Op.52」や「英雄ポロネーズ Op.53」も生み出されている円熟期です。
落ち着いた環境の中で熟成された音楽であり、社交と演奏活動に追われがちなパリの季節とは違う、呼吸の深さが音そのものに刻まれていると感じられるでしょう。
この作品はショパン特有の歌う旋律の美しさをそのままに、古典派のソナタのしっかりした形式の中で音楽が展開していきます。
全体の流れは暗いロ短調から始まり、最後は明るいロ長調に着地します。
聴き終わったときに晴れやかな充実感が残るのが、この曲の大きな魅力です。
第1楽章は冒頭に現れる鋭い下降の合図のような音型が、その後さまざまな形に姿を変えて音楽を牽引します。
このフレーズを耳に入れておくと、曲のあちこちでそれが顔を出すたびに「あ、ここにも」と気づけて面白くなります。
少しあとで長調のやわらぐ美しい歌い回しが現れて、緊張と安らぎの対話が始まります。
そして、ロ長調の輝きの中で締めくくられます。
第2楽章のスケルツォは、風が通り抜けるように速く軽やかで、短い中間部でふっと空気が和らぎます。
ひらひらと舞う右手の動きに耳を預けていると、前後の重厚さとのコントラストが気持ちよく感じられるでしょう。
第3楽章は、このソナタの心臓部ともいえる、静けさと大きなうねりの息を呑むほどに美しい音楽です。
ノクターンを思わせる穏やかな表情で、長い息遣いの旋律が時間をかけて広がります。
和音の移ろいに身を任せているだけで、音が少しずつ明るくなったり陰りを帯びたりするさまが自然に分かってきます。
終楽章は、止まらない推進力が一気に走り出すフィナーレです。
冒頭の同音オクターブの合図のあと、細かな音型が渦を巻くように前へ前へと進み、ピアノという楽器の運動性と輝きがまるごと解き放たれます。
コーダに向かって視界が開け、最後はロ長調の明るい光の中で断ち切るように終わります。
このソナタ全体が暗から明へと、清々しい変化を遂げていたことに気付かされます。
今大会では「第1楽章提示部のリピートは無し」というルールなので、ソナタの演奏時間が少し短くなります。
その分、他の曲も聴くことができるので私は嬉しいですが、コンテスタントはプログラムの構成に頭を悩ませたことと思います。
牛田さんが用意されたプログラムを全て聴くことができて本当に幸せです!
牛田さんのご健闘を、心からお祈りしております。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











