【速報】小林海都さんと桑原志織さんの演奏を聴いた感想〜本大会1次予選編 | 第19回ショパン国際ピアノコンクール
ショパン国際ピアノコンクール、本大会1次予選3日目に、小林海都さんと桑原志織さんが登場されました。
演奏プログラムの簡単解説と演奏を聴いた私の感想を速報でお届けします。
小林海都さんの演奏を聴いた感想
小林海都さんは神奈川県横浜市出身。
2021年のリーズ国際ピアノコンクールで第2位と最優秀室内楽演奏賞を受賞。
2024年には、浜松国際ピアノコンクールで第3位を獲得。
作曲の素養を活かした立体的な音響設計と、柔軟な音楽対話力が国際的に評価されています。
予備予選免除で本大会へ挑むシード選手です。
ピアノはヤマハに交換されました。
コンクールのピアノ選びは本当に大変だということを、ショパンコンクールのドキュメンタリー映画「ピアノフォルテ」を観て再認識しました。
「この会場ではこっちのピアノが合うような気がする。でも弾いたことのないメーカーのピアノ。もう、どれもこれも全部だめな気がする…」
あるコンテスタントは、客席にいた師匠に混乱している胸中を訴えていました。
ピアノは馴染みのあるメーカーでも同じ音色ではないし、癖も短時間ではわからないので、一か八かということもあるでしょう。
なお、牛田智大さんは前回大会ではヤマハでしたが、今回はスタインウェイでしたね。
小林さんは黒いスーツに赤いシャツ・チーフを合わせ、襟元にはラベルピンがありました。
さらっとこういう着こなしができるとは、普段からとてもお洒落な身だしなみの方なのでしょう。
舞台袖では良い緊張感を保っておられる表情でした。
ここからは演奏を聴いた私の感想をお話します。
なお、大会の様子はショパン国際ピアノコンクールの公式YouTubeチャンネルで配信されます。
ぜひご覧ください。
ノクターン ロ長調 Op.62-1
「ノクターン ロ長調 Op.62-1」については牛田智大さんも大会初日に演奏されました。
作品解説は牛田さんの演奏の感想記事をご覧ください。
また、牛田さんの演奏プログラムは全曲、さらに詳しい解説を別の記事で共有しています。
ご興味のある方はこちらもあわせてご確認ください。
小林さんの演奏は左手もよく歌っていて、右手の旋律との対応が素晴らしかったです。
繊細さの上に深みも加わって、左手というのが本当に大事だということを実感しました。
エチュード ロ短調 Op.25-10
「エチュード ロ短調 Op.25-10」
通称「オクターブのエチュード」は、ショパン27歳頃にパリで書かれました。
オクターブの跳躍と連続に焦点を当て、力強さとしなやかさを同時に求める作品です。
嵐のようなスピード感に乗りながらフレーズの末尾ではふっと影が差す、その明暗の切り替わりがスリルを生み、ロ短調の緊張感を一段と際立たせます。
やがて短調の翳りがふっと晴れて、長調の穏やかな場面が訪れます。
嵐の合間に覗く一瞬の青空との対比が鮮やかに感じられ印象的です。
小林さんは決して遅いスピードではないのに、1つ1つの音が明瞭なので必死感が感じられず自然な音楽です。
乱暴になりがちなアクセントも、安定したちょうどよい音量で心地よかったです。
ワルツ 第2番 変イ長調 Op.34-1
「ワルツ第2番 変イ長調 Op.34-1」は、19世紀前半のパリのサロン文化を反映した作品です。
ショパンは25歳頃にこの曲を作曲し、鑑賞用の芸術作品としてワルツを昇華させました。
温かく柔らかな響きを与える変イ長調で、左手の三拍子のリズムに乗って、右手は小さな飾りやため息のような音を散りばめ、まるで話し言葉が抑揚を持つように旋律をしゃべらせます。
ショパン特有のルバートの味わいを感じられると、音楽が立体的に見えてきます。
派手さと上品さのバランスが絶妙な作品です。
ワルツではかなり緩急を付けて揺らしておられましたが総合的な尺は安定しているのでとても優雅です。
軽いタッチでの演奏は小林さんの魅力の一つですね。
バラード 第1番 ト短調 Op.23
「バラード 第1番 ト短調 Op.23」は、感情豊かで劇的な物語性を感じさせるショパン25歳頃の作品です。
フィギュアスケートの羽生結弦さんが使用して、一気に有名になりましたね。
物語の開始を告げる旋律のあと、柔らかな主題が歌います。
穏やかな旋律が経験を重ねる主人公のように表情が豊かになり、ときに切なく、ときに力強く育っていきます。
緊張が高まったあと、ふっと静まり、暗い夜空に一筋の月明かりが差すような安堵が広がります。
クライマックスでは駆けるパッセージと力強い和音で盛り上がり、鮮烈な終止符で締めくくられます。
小林さんの音楽は考え抜かれた音であるのに、とても自然でこじつけのように聞こえません。
コーダで少し音ミスがあったのが惜しかったですが、プレリュードやポロネーズを聴いてみたいと思われた方は多かったと思います。
弾き終わると同時に「ブラボー」の声と万雷の拍手でした。
桑原志織さんの演奏を聴いた感想
桑原志織さんは東京都出身。
2014年に日本音楽コンクール第2位・岩谷賞を受賞。
その後、マリア・カナルス(2016)、ヴィオッティ(2017)、ブゾーニ(2019)、ルービンシュタイン(2021)と世界的コンクールで次々と第2位に輝き“シルバーコレクター”と称されます。
2025年のエリザベート王妃国際音楽コンクールではファイナリストに入選。
牛田さん・小林さん同様、予備予選免除で本大会に出場されます!
桑原さんの登場です。
黒のパンツスーツで袖がシースルーでとても上品な衣装です。
アクセサリーは小ぶりのシルバーで統一されています。
桑原さんもとてもお洒落な方で、エリザベートの衣装も素敵でした。
舞台袖では、軽く屈伸運動をしておられました。
あまり緊張はしないと、エリザベートのインタビューで語っておられました。
安心して聴く準備が整います。
ここからは演奏を聴いた私の感想をお話します。
エチュード イ短調 Op.25-11「木枯らし」
「エチュード イ短調 Op.25-11『木枯らし』」はショパン26歳頃の作品です。
技巧的にも非常に難しく、ドラマティックな展開を持つこの作品は、故郷への深い想いと孤独を抱えているショパンの感情の激しさと詩的な美しさを同時に感じさせる名作として、多くの人々に愛されています。
冒頭はゆったりとした旋律の序奏ですが、その後一転して嵐のような急流の音型がピアノ全体を駆け巡ります。
右手は急速な音階・アルペジオを連ね、左手は大きく跳躍するという、まさに冬の木枯らしが吹き荒れる情景を連想させます。
なお、「木枯らし」の愛称は後世の人が付けたもので、ショパン本人によるものではありません。
桑原さんはエリザベートでもこの曲を弾かれました。
最初の音は指づかいから言うと3がちょうど良いのですが、あえて2の指を使っているのは特別な音色が出しやすいからでしょう。
男の方の手を見た後の桑原さんの手は、やや小さくて丸みがあってかわいいのですが、そこから出される音はパワフルな中にも柔らかな弾力があります。
桑原さんの音楽は一瞬で会場の方々を虜にしました。
ノクターン ロ長調 Op.9-3
「ノクターン ロ長調 Op.9-3」は、サロン文化が花開くパリで、少人数の空間で聴く作品としてショパン21歳頃に書かれました。
静かな夜の独りごとのように始まり、その後、和音が少し濁り、リズムも落ち着かなくなり、明るく澄んだ響きのロ長調から影の差す響きへと傾いていきます。
ここは、心の奥にある不安や記憶が顔を出す場面だと思って聴いてみましょう。
やがて静けさが戻りますが、冒頭よりも装飾音で繊細に飾られながら、そっと終止に向かっていきます。
内側に秘めた表情の変化や和声の色づけが細やかで、聴くたびに新しい発見がある作品です。
小さな幸せを噛みしめるようにはじまった演奏はとてもあたたかく、バターたっぷりのお菓子の香りに包まれるようでした。
とても詩的で深みのある音は、いつまでも聴いていたいと感じさせてくれます。
息づかいと色合いの微妙な変化で、音楽は心を動かされるのですね。
ワルツ 第2番 変イ長調 Op.34-1
「ワルツ 第2番 変イ長調 Op.34-1」については小林海都さんも演奏しており、この記事の前半で解説していますので、興味のある方は少し戻ってご確認ください。
小林さんは軽やかなステップの小粋な演奏で、桑原さんは高級感あふれる優雅な演奏
といったところでしょうか。
どちらも上品でおしゃれで、甲乙つけがたく素敵でした。
牛田さんが弾かれた「ワルツ 第5番 変イ長調 Op.42」とこの曲は、ショパンのワルツの中で難曲トップ2と言われます。
小林さん・桑原さんのお二人のOp.42の演奏もぜひ聴いてみたいです。
バラード 第4番 へ短調 Op.52
「バラード第4番 ヘ短調 Op.52」は、ショパン33歳頃の作品で、繊細な美学と劇的な物語性が凝縮された最高傑作の一つです。
落ち着いた呼吸で扉が開き、控えめな第一のメロディーが姿を見せます。
それに答えるように、少し明るい第二のメロディーが続きます。
この二つが、同じ面影を保ちながらも、場面ごとに表情や歩幅を変えて現れ、熱を増していきます。
中間部の穏やかな場面は、嵐のような終盤への序章となり、駆けるパッセージと激しいオクターブが物語を鮮烈に締めくくります。
静けさ、ささやき、語り、昂ぶり、決意
そして、終幕へ。
長編映画を観るようにたどれば、ショパンが目指した「物語としての音楽」が、まっすぐ届いてくるでしょう。
同じ楽譜から語り手が変わればまったく違う物語が立ち上がります。
情感あふれる演奏は別格で、流石、エリザベートのファイナリストです!
この本大会に進出しているコンテスタントの中においても、桑原さんは「極上」という言葉が当てはまるでしょう。
演奏が終わるやいなや、歓声があちらこちらから聞こえ、頭の上に手を掲げての大きな拍手が鳴り響きました。
舞台でお辞儀をされる桑原さんは、知的でクールビューティです。
2次予選進出は、まず間違いないと思います。
次のステップ
本大会1次予選は、現地ポーランド時間で10月7日の夜までおこなわれます。
日本時間では時差が7時間あるので、10月8日の早朝までおこなわれます。
その後、審議を経て1次予選通過者が発表されますが、日本時間では10月8日中には発表されるのではないかと思います。

1次予選の通過者は40名ですが、前回大会では少し上回り45名が通過しました。
2次予選は1次予選の結果発表の翌日、10月9日から4日間おこなわれます。
3次予選に進むことができるのは20名です。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











