【速報】牛田智大さんの演奏を聴いた感想〜本大会1次予選編 | 第19回ショパン国際ピアノコンクール
ショパン国際ピアノコンクール、本大会1日目に牛田智大さんが登場されました。
演奏プログラムの簡単解説と、演奏を聴いた私の感想を速報でお届けします。
加えて、結果発表と次のステップについても簡単に確認します。
牛田智大さんの演奏を聴いた感想
牛田智大さんは、2018年の浜松国際ピアノコンクールでの第2位の実績により、予備予選免除で本大会へ直接出場を決めたシード選手です。
2024年にはリーズ国際ピアノコンクールで聴衆賞を獲得。
現在はショパン音楽大学で、研鑽を積まれています。
牛田智大さんについては過去の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。
本大会1次予選の演奏順では「T」の方がトップバッターになりました。
もしも「U」だったとしても、牛田さんの前に香港のUさんがいらっしゃるので、トップバッターにはならないということはわかっていました。
そして、本大会2次予選は、中6つ空けたアルファベットからということで、牛田さんは後半に弾かれることがほぼ決定しています。
本大会3次予選も同様なので、くじ運としてはちょうど良かったのではないでしょうか。
ここからは演奏を聴いた私の感想をお話します。
なお、大会の様子はショパン国際ピアノコンクールの公式YouTubeチャンネルで配信されますので、先にぜひ演奏をご覧ください。
舞台袖の牛田さんは、いつもの穏やかな笑顔でした。
今回は黒のスーツの中に、グレーのベストをあわせておられます。
髪の毛を耳にかけたヘアスタイルも素敵でした。
ちなみに髪の毛を耳にかける心理は、モチベーションをアップさせて、気合を入れるためということです。
手がまだ冷たいのか、首に当てていらっしゃいました。
ノクターン ロ長調 Op.62-1
「ノクターン ロ長調 Op.62-1」はショパン36歳頃の晩年の作品です。
派手な感情表現ではなく、内面の揺らぎや、ため息のようなニュアンスが特徴的です。
ロ長調の明るい調性に絶えずかすかな陰影が交わり、晩年の静かな円熟を感じさせます。
左手は一定のアルペジオで脈を刻み、右手のメロディーが呼吸するように歌います。
これはショパンのルバート「伴奏は時間を守り、旋律は心のままに」の典型例です。
再現部の美しいトリルは死を受け入れたショパンの静かな微笑のようで、ピアニッシモの表現と余韻が印象的な作品です。
牛田さんの演奏は、すみずみまで計算された打鍵スピードで、牛田さんの並々ならぬ音楽性を感じました。
濃密な時間が終わった後、おそらく息を止めて聞き入っていたであろう観客の方々が、あちらこちらで大きな息をするのが聞こえました。
インタビューで、ショパンの全作品を弾いたとおっしゃっていた牛田さん。
作品番号が付いていない曲も含めると、250曲以上あるらしいです。
その中から今回のノクターンを第1曲目に選ばれたのは、きっと深い意味があるのでしょう。
エチュード ハ長調 Op.10-1
「エチュード ハ長調 Op.10-1」はショパン20歳頃の作品で、「12のエチュード Op.10」の冒頭を飾る名曲です。
テーマは、「広い音域をまたぐアルペジオの美しさと均整」
英語圏では”Waterfall(滝)”と呼ばれます。
右手の大きな開きと持久力が試される超難曲ですが、アルペジオの上に歌うような旋律が浮かぶ二層構造が魅力的です。
明るいハ長調から影のある響きを経て、最後は眩しいハ長調で閉じられます。
どの曲も怖いですが、ミスがわかりやすいという意味で恐ろしい作品です。
牛田さんは一段とテクニックに磨きがかかり、安定感がありました。
低音から高音へ駆け上がるアルペジオの中間部に、新しいメロディーを浮き立たせるという難度の高い技を披露してくださいました。
目からうろこの解釈です!
発見してワクワクしながら練習されている牛田さんのお姿が目に浮かびます。
ワルツ 第5番 変イ長調 Op.42
「ワルツ 第5番 変イ長調 Op.42」はショパン30歳頃の最高傑作ワルツです。
きらめきと機知に満ちた作品で、最大の特徴は「ヘミオラ」という手法により、3拍子なのに「1・2・1・2」と2拍で軽やかに進むように聴こえることです。
中間部はアリア風で主題との対比が美しく、華やかさと知的な遊び心が絶妙に同居しています。
クラシックに不慣れな方にも親しみやすい名曲だと思います。
独特のリズムで、ポーランドの民族性が高いワルツです。
トリルは長めで攻めた演奏でしたが、優雅さももちろん持ち合わせていらっしゃいます。
すぐ前のコンテスタントと後半の2曲が重なっていましたが、違う解釈だったのでいろいろ楽しめました。
最後は力強くスパッと終わるか、軽くフワッと終わるか。
牛田さんは前者で、前の方は後者でしたね。
この曲と次の「舟歌」は、前回大会の2次予選でも演奏されました。
前回の小林愛実さんのように、2度目の挑戦ではガラッと曲を変える方がいらっしゃる一方で、牛田さんはこだわりを持って再挑戦されたのだと思います。
前回牛田さんは、会場の音響がつかめずに、とっさの判断で倍音を意識した弾き方をされました。
残念ながら裏目に出てしまい、素晴らしい演奏にもかかわらず、1次予選から厳しい採点結果でした。
牛田さんはあのまま終わりたくなかったのだと思います。
あえて同じ曲で、新たな解釈もさらに盛り込んで、舞台で成果を披露されました。
素晴らしい勇気に拍手を送ります。
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
「舟歌 嬰ヘ長調 Op.60」は、ショパン晩年の傑作で35~36歳頃に作曲されました。
ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの舟歌を思わせる作品で、ゆったりと揺れるリズムに乗せて柔らかく歌う旋律が特徴です。
嬰ヘ長調は水面に陽の光が反射するような明るさを音色に与えます。
左手の規則的でしなやかなうねりが波の寄せ返しを表現し、最後は華麗なコーダでクライマックスを迎える美しい希望に満ちた作品です。
角度によって変わる一瞬の影も見逃さないという、素晴らしい演奏でした。
コンクールであることを忘れてしまうほど惹き込まれました。
中盤から汗が見え、ベストが暑くないだろうか?
とお節介な心配もしました。
少し音色が硬い部分もありましたが、拍手喝采だったので、おそらく会場では大丈夫だったのではないかと思います。
次のステージに進まれますように!
心からお祈りしております。
各作品のさらに詳しい解説は過去の記事でお話しています。
次のステップ
本大会1次予選は、現地ポーランド時間で10月7日の夜までおこなわれます。
日本時間では時差が7時間あるので、10月8日の早朝までおこなわれます。
その後、審議を経て1次予選通過者が発表されますが、日本時間では10月8日中には発表されるのではないかと思います。

1次予選の通過者は40名ですが、前回大会では少し上回り45名が通過しました。
2次予選は1次予選の結果発表の翌日、10月9日から4日間おこなわれます。
3次予選に進むことができるのは20名です。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











