【セミファイナル前半戦】亀井聖矢さんの圧倒的な存在感に震えた!中川優芽花さんの感性輝く表現と吉見友貴さんの品格溢れるモーツァルト
エリザベート王妃国際音楽コンクール ピアノ部門の、セミファイナルの前半戦が終了しましたね。
今回は、吉見友貴さんのコンチェルト、中川優芽花さんのリサイタル、そして亀井聖矢さんのリサイタルに焦点を当ててお話しします。
吉見友貴さんのコンチェルトを聴いて
吉見友貴さんは、5月12日(月)セミファイナル1日目の深夜3時からの部に登場されコンチェルトを披露されました。
演奏された曲は、
モーツァルト作曲:ピアノ協奏曲 第15番 K.450 変ロ長調
モーツァルト28歳頃の作品です。
この頃のモーツァルトは演奏会活動を活発に行い、演奏会で披露するための作曲活動も盛んでした。
特にピアノ協奏曲を第14番から第19番まで6曲も作っています。
その中でも第15番は特に技巧的で華やかさを追求しています。
以下、演奏を聴いた感想です。
第1楽章 Allegro
オーケストラの奏者一人一人もカメラが捉えていて、見応えがありました。
吉見さんの明瞭なタッチが華やかさを強調しています。
ピアノとオーケストラのバランスもよく、自然に溶け合っていました。
1楽章、第3楽章にはモーツァルト自身によるカデンツァが残されています。
ピアニストの腕の見せ所というようなカデンツァですが、吉見さんの演奏は自由なテンポで大変美しかったです。
なお、カデンツァとは、特にピアノ協奏曲において見られる即興的な独奏パートのことです。
通常、協奏曲の第1楽章の終わり近くに置かれます。
オーケストラが静かになり、ピアニストだけが自由に技巧を披露する華やかな場面です。
「さあ、ここからはピアニストの見せ場!」
という特別なセクションと考えるとわかりやすいでしょう。
もともとは演奏者が即興で演奏していましたが、現代では作曲家があらかじめ書いたものを演奏することが多いですね。
第2楽章 Andante
吉見さんの優しさが染み渡るピアノの主題から、その後変奏曲形式になっていきます。
オーケストラが主題を担当するときはピアノが伴奏になるときもありますが、吉見さんのアルペジオは控えめながらも華麗に引き立てていました。
吉見さんはppも素敵です。
第3楽章 Allegro
上機嫌なこの曲は明るく茶目っ気に飛んでいます。
第2楽章との対比が素晴らしく、吉見さんは音に曇りがなく溌溂(はつらつ)と演奏されました。
高速で手が交差するところなど、テクニック的にも大変難しそうですが、見事です!
ppからffまで多彩な音色で表現が工夫され、内容の濃いモーツァルトでした。
美味しくて質の良いフルコースのお料理を堪能した気分です。
なお、この曲は、5月17日(土)に亀井聖矢さんも演奏されます。
亀井さんの演奏が俄然楽しみになってきました!
吉見さんは本日夜にリサイタルを控えています。
精一杯応援させていただきます!
中川優芽花さんのリサイタルを聴いて
中川優芽花さんは5月13日(火)セミファイナル2日目の深夜3時からの部に登場されリサイタルを披露されました。
演奏プログラムは
アナ・ソコロヴィッチ作曲:ピアノのための2つの練習曲
シューマン作曲:幻想小曲集 Op.12
プロコフィエフ作曲:ソナタ 第3番 Op.28 イ短調
以下、演奏を聴いた感想です。
アナ・ソコロヴィッチ作曲:ピアノのための2つの練習曲
エリザベート2025のために作曲された新作課題曲です。
アナ・ソコロヴィッチはセルビア出身で、現在はカナダのモントリオールを拠点にして作曲活動をされています。
レパートリーは幅広く、特にオペラを中心に高く評価され、これまで数多くの受賞に輝きました。
バルカン半島の民俗音楽などからインスピレーションを受けて作曲されるそうです。
中川さんは、楽譜はタブレットを、譜めくりはフットペダルを使っておられました。
2曲とも超がつく難度の高さで、正直楽譜を見ている余裕はあまりありません。
1曲目はあらゆる指でのトリルや同音連打などの細かい音符が幻想的で、メロディーは民族的な音楽です。
不思議な空間に迷い込んで、あちらこちらからの音の反響を受けているイメージです。
2曲目も民俗音楽の香りがする現代音楽で、エネルギッシュで超絶技巧満載です。
音の跳躍がすさまじく、カメラが上から鍵盤をとらえたとき驚きました。
休符でピアノの底を下から叩く指示もあり、それが絶妙なアクセントになっています。
ピアニストは運動神経、反射神経も要求されますね。
中川さんは短期間で最大に表現されたと思います。
シューマン作曲:幻想小曲集 Op.12
「夕べに」「飛翔」「なぜ」「気まぐれ」「夜に」「寓話」「夢のもつれ」「歌の終わり」
以上の8曲からなっています。
シューマンが27歳頃の作品です。
この頃は、9歳年下のクララとの結婚を、クララの父親でありシューマンの師であるヴィークに大反対されて苦しい状況が続いています。
クララは当時、大人気のピアニストだったので、育て上げた父親としてはもっと活躍してほしかったのでしょう。
この作品集はシューマンのクララに対する思いが詰まっています。
中川さんの演奏は多声部の音色がそれぞれ独立して重なり合うところが素敵です。
メロディーがわかりやすく、さらに美しく聞こえます。
発表会でよく弾かれる「飛翔」は、まさにこうあるべきという演奏でした。
0.5倍速でもこのような表現で弾けたら良いですね。
色々なタイプの曲を聴いて堪能しましたが、幻想小曲集はこんなに難しい曲のオンパレードだったのか、と再認識しました。
印象派や近代曲の選曲が多い中、前期ロマン派のシューマンを選ばれたのは新鮮でした。
中川さんは、2019年に若いピアニストのためのロベルト・シューマン国際コンクール(14歳~17歳の部)で優勝されているので納得です。
プロコフィエフ作曲:ソナタ 第3番 Op.28 イ短調
プロコフィエフが26歳頃の作品です。
この曲には「古い手帳から」という副題が付いています。
これは16歳で作曲したイ短調のソナタを、10年後に改作したという理由だそうです。
序盤はミスタッチがありましたが、勢いに乗って見事にまとめられました。
渾身の演奏でした!
中川さんは5/16(金)にコンチェルトを披露されます。
こちらも楽しみですね!
亀井聖矢さんのリサイタルを聴いて
亀井聖矢さんは5月14日(水)セミファイナル3日目の深夜3時からの部に登場されリサイタルを披露されました。
演奏プログラムは
アナ・ソコロヴィッチ作曲:ピアノのための2つの練習曲
ベルク作曲:ソナタ Op.1
細川俊夫作曲:ピエール・ブーレーズのための「俳句」
リスト作曲:「ノルマ」の回想
アナ・ソコロヴィッチ作曲:ピアノのための2つの練習曲
中川さんのところで曲のご紹介をさせていただきましたが、亀井さんが本領発揮できるテクニック満載の曲です。
中川さんはフットペダルで譜めくりをしていらっしゃいましたが、亀井さんはタブレットに触れての譜めくりです。
譜めくりできる空白があるか心配で、一瞬ヒヤッとしましたが、なんとか大丈夫でした。
クリスタルな綺麗な音で、演奏後は拍手が溢れました。
ベルク作曲:ソナタ Op.1
ベルクはオーストリアの作曲家です。
独学で作曲をしていましたが、シェーンベルクに師事するようになり、彼の指導の下にこの曲を完成させました。
伝統的なソナタ形式が使われていますが、発展的変奏というシェーンベルクの技法が取り入れられています。
未知の空間に恐る恐る、しかし内心ワクワクしながら入っていくような表現が素晴らしかったです。
2022年のヴァン・クライバーンでも演奏されました。
細川俊夫作曲:ピエール・ブーレーズのための「俳句」
この曲は細川俊夫氏がフランスの作曲家・指揮者であるピエール・ブーレーズの、75歳の誕生日を記念してロンドンでおこなわれたコンサートのために作曲されました。
2022年に優勝したロン=ティボーコンクールでも演奏されました。
2分半ほどの短い曲ですが、残響効果が素晴らしく、ベルクのソナタとリストの「ノルマ」の回想をつなぐための精神統一としてもよかったと思います。
曲間の拍手も防ぎ、集中力が高まりました。
リスト作曲:「ノルマ」の回想
リストは、19世紀最大のピアノのヴィルトゥオーソと言われていましたが、当時流行っていたオペラの主題をモチーフにして超絶技巧を駆使した作品を作るという、新しいジャンルも開拓しました。
この曲は、ベッリーニのオペラ『ノルマ』の主題を使った作品で、超難曲として名高いです。
こちらも亀井さんと言えば、で名前が上がる十八番ですね。
2022年のヴァン・クライバーンでも演奏されました。
亀井さんの演奏は非常にスピード感があり、メロディーがくっきり歌われます。
その合間の無理難題の伴奏がどれほど困難かわかりにくいほど颯爽としていました。
音だけ聞けば二台のピアノで演奏しているかのようです。
亀井さんの魅力が存分に発揮されました!
客席から割れんばかりの拍手が鳴り響き、亀井さんのお顔も大変満足そうな表情でした。
亀井さんはセミファイナル最終日、5/17(土)にコンチェルトを披露されます。
こちらも楽しみですね!
まとめ
私が個人的に注目している吉見友貴さん、中川優芽花さん、そして亀井聖矢さんの演奏の感想をまとめてお届けしました。
吉見友貴さんの品格あふれるモーツァルト解釈
中川優芽花さんの感性が輝く表現
亀井聖矢さんの圧倒的存在感と超絶技巧
セミファイナル前半戦を振り返ると、それぞれ個性豊かな演奏を披露されました!
後半戦でのご活躍も、お祈りしております。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











