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ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール【2025年注目のピアノコンクール】

2025.02.21

2025年の注目コンクールとして、今回はヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールを解説します。

大会概要・大会スケジュール・課題曲を深堀りしていきます。

コンクール概要

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールはアメリカ人ピアニスト「ヴァン・クライバーン」を讃えて、4年に1度おこなわれるアメリカのピアノコンクールです。

前回はコロナの影響で1年間の延期を経て2022年に開催されましたが、本来は大統領選挙の翌年におこなわれます。

高額の優勝賞金で有名ですが、課せられた演奏所要時間が長く、副賞として与えられるコンサートの契約数が膨大なのも特徴です。

2009年に辻井伸行さんが優勝されたことで、一躍日本でも有名なコンクールになりました。

2022年の第16回大会では、亀井聖矢さんのセミファイナル出場が記憶に新しいです。

ヴァン・クライバーンは、1958年の第1回チャイコフスキー国際コンクール(ピアノ部門)の優勝者で、アメリカの国民的英雄です。

なお、話はチャイコフスキー国際コンクールにそれますが、チャイコフスキー国際コンクールは科学技術で目覚ましい発展を遂げたソ連が、音楽でも世界をリードするために企画・開催されました。

クライバーンが優勝した1958年大会時はアメリカとソ連が冷戦中で、アメリカ人がソ連の地を踏むことさえも困難な時代でした。

クライバーンの素晴らしい演奏を目の当たりにした審査員は、当時のソ連最高指導者フルシチョフに「アメリカ人の優勝でもよいかどうか」についてお伺いをたてたそうです。

フルシチョフは了承しました。

ロシアのピアノコンクールでの冷戦下でのアメリカ人の優勝や、アメリカ人であるクライバーンがファイナルでロシアを代表するチャイコフスキーやラフマニノフのコンチェルトを選択し演奏したことは、音楽には国境がないということの証明となり、チャイコフスキー国際コンクールの名声を高める結果となりました。

大会スケジュール

映像審査

まず、映像審査があります。

コンテスタントは2024年10月に35~40分の演奏動画を提出しています。

45の国と地域から合計340名の応募があり、先日77名のピアニストが選ばれました。

通過者は3月の予備予選に進みます。

予備予選

予備予選は2025年3月16日から22日まで。

米国テキサス州フォートワースで開催され、コンテスタントは25分間以内のソロリサイタルをおこないます。

日本からは、山﨑亮汰さん、森本隼太さん、重森光太郎さんが通過されました。

その他、私が気になっているコンテスタントは次のとおりです。

ピョートル・アレクセイヴィチ(ポーランド)
ゲオルギス・オソーキンス(ラトビア)
ソン・ユトン(中国)
カイ・ミン・チャン(台湾)

上記の方々以外にも、見ごたえ聴きごたえがあるピアニストのオンパレードです。

通過者の30名が本大会の予選ラウンドに進みます

本大会・予選ラウンド

本大会・予選ラウンドは2025年5月21日から23日におこなわれます。

予備予選を通過した30名のピアニストは、40分以内のリサイタルをおこないます。

プログラムは演奏者自身が選曲できますが、必ず審査員の一人であるガブリエラ・モンテロが作曲した4分から6分の委嘱作品を含める必要があります。

この委嘱作品は2025年3月28日までに予選ラウンド出場者に送付されます。

演奏曲は完全な作品のみが認められ、楽章のみの演奏は認められません。

なお、暗譜での演奏が必須ですが、委嘱作品のみ楽譜を見ての演奏が認められています。

予選ラウンドの演奏はTCU(Texas Christian University)キャンパス内のヴァン・クライバーンコンサートホールでおこなわれ、審査の結果、18名が次のクォーターファイナルに進出します。

本大会・クォーターファイナルラウンド

本大会・クォーターファイナルラウンドは2025年5月24日から25日におこなわれます。

予選を通過した18名のピアニストは40分以内のリサイタルをおこないます。

レパートリーは演奏者が自由に選曲できますが、予選ラウンドで演奏した曲目を再度演奏することはできません。

また、演奏曲は完全な作品のみが認められます。

会場は予選ラウンドと同じく、TCUキャンパス内のヴァン・クライバーンコンサートホールです。

このラウンドの審査結果により、12名のピアニストがセミファイナルに進出します。

本大会・セミファイナルラウンド

本大会・セミファイナルラウンドは2025年5月28日から6月1日におこなわれます。

セミファイナルラウンドは2つのフェーズで構成されます。

フェーズ1では、クォーターファイナルを通過した12名のピアニストが60分以内のリサイタルをおこないます。

プログラムは演奏者が自由に選曲できますが、予選ラウンドおよびクォーターファイナルラウンドで演奏した曲目は再度演奏できません。

また、演奏曲は完全な作品のみが認められます。

フェーズ2では、各ピアニストがフォートワース交響楽団と共演し、モーツァルトのピアノ協奏曲を1曲演奏します。

演奏曲は指定された10曲の中から選択します。

このラウンドはバス・パフォーマンス・ホールで開催され、審査の結果、6名がファイナルに進出します。

本大会・ファイナル

本大会・ファイナルラウンドは2025年6月3日から7日におこなわれます。

ファイナルラウンドでは、セミファイナルを通過した6名のピアニストが、フォートワース交響楽団と2つの協奏曲を演奏します。

1つ目の協奏曲は、以下の指定された曲目リストから1曲を選びます:

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲(全5曲)
ショパン:ピアノ協奏曲(第1番、第2番)
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー、ピアノ協奏曲
グリーグ:ピアノ協奏曲
リスト:ピアノ協奏曲(第1番、第2番)
メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲 第1番
ラヴェル:ピアノ協奏曲、左手のためのピアノ協奏曲
サン=サーンス:ピアノ協奏曲(第2番、第5番)
シューマン:ピアノ協奏曲

2つ目の協奏曲は、演奏時間が42分以内であれば、ピアノと管弦楽のための作品を自由に選ぶことができます。

ただし、選曲は指揮者・オーケストラ・クライバーン委員会の承認を得る必要があります。

なお、限られたリハーサル時間を考慮した選曲が推奨されています。

このラウンドもバス・パフォーマンス・ホールで開催されます。

課題曲

指定された課題曲は比較的少ないですが、自由選択が非常に多いため、参加者は大変な数の曲の練習に取り組まなければなりません

ショパン国際ピアノコンクールは、文字通りすべてショパンの課題曲からの選曲ですが、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールは自分の得意な作曲家・作品から選曲できます。

具体的に知っておくために、前回セミファイナルまで勝ち残った亀井さんのプログラムを振り返ってみましょう。

本大会・予選ラウンドでの亀井さんのプログラム(40分のソロ)

スティーブン・ハフ作曲「ファンファーレ・トッカータ」

コンクールのために書き下ろされた現代曲で、予備予選通過者に通知されてからの練習期間は今大会同様、約2ヶ月しかありませんでした。

ショパン作曲「エチュードOp.10 No.2」

右手の中指・薬指・小指で半音階を弾く難曲です。

ベルク作曲「ソナタ No.1」

主題のモチーフが前衛的に展開していく20世紀音楽です。

リスト作曲「ノルマの回想」

リストのジャンルの一つである、オペラのパラフレーズです。

リストの作品の中で、最も難易度が高いピアノ曲と言われています。

本大会・クォーターファイナルラウンドでの亀井さんのプログラム(40分のソロ)

J.S.バッハ作曲「半音階的幻想曲とフーガ」

バッハの鍵盤音楽の中でもっとも人気が高いです。

リスト作曲「超絶技巧練習曲 第4番 『マゼッパ』」

フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの叙事詩「マゼッパ」に感銘を受けて作曲された難曲です。

ラフマニノフ作曲「ソナタ 第2番 Op.36」

チャイコフスキーが滞在していたローマの部屋で、彼を尊敬するラフマニノフが書き上げた作品です。

本大会・セミファイナルラウンドでの亀井さんのプログラム(60分のソロとモーツァルトの協奏曲)

ベートーヴェン作曲「ピアノソナタ 第21番 Op.53 『ワルトシュタイン』」

「熱情」と並ぶ、中期ソナタの傑作で、和音の同音連打から始まる第1楽章は印象的です。

リスト作曲「パガニーニによる大練習曲 第3番『ラ・カンパネラ』」

最大で15度の跳躍があり、その直後に休む間もなく細かい音符が続いたり、難しい技巧を含むフレーズが展開していく有名曲です。

バラキレフ作曲「東洋風幻想曲 イスラメイ」

ピアノ独奏曲の中で難曲というと必ず名前が上がる作品です。

ラヴェル作曲「夜のガスパール」

第1曲『オンディーヌ』
水の精の細やかな心情を表現した曲です

第2曲『絞首台』
死を告げるような、不気味な鐘の音が刻まれます

第3曲『スカルボ』
悪戯好きの妖精が、縦横無尽に走り回るというイメージです。
当時、最難曲と言われた「東洋風幻想曲 イスラメイ」を超える難曲であるとラヴェルが語っています。

モーツァルト作曲のピアノ協奏曲は「第19番 ヘ長調 K.459」を弾かれました。

最後の27番が「戴冠式」、19番は「第二戴冠式」と呼ばれています

本大会・ファイナルラウンドでの亀井さんのプログラム(2つの協奏曲)

残念ながら亀井さんはファイナルには進めませんでしたが、おそらくこの2曲を用意されていたと思われます。

サン=サーンス作曲「ピアノ協奏曲 第5番」 
ラフマニノフ作曲「ピアノ協奏曲 第3番」

なお、同年11月に開催されたロン=ティボー国際ピアノコンクールでは、サン=サーンス作曲のピアノ協奏曲第5番で見事優勝に輝きました。

亀井さんの選曲は、バロック・古典派・前期/後期ロマン派・印象派・近代曲・現代曲と、全ての時代の作品を網羅しています。

しかも、難曲を意識したプログラムでした。

曲の難易度は、審査の重要要素なので、持ち味を十二分に発揮されたと思います。

前回は協奏曲の課題曲が2つのグループに分かれていて、各グループから1つずつ選びましたが、今回、1つのグループから1曲選曲し、2曲目はコンテスタントが大会関係者の承認のもと、自由に選ぶことができるようになりました。

特徴

このコンクールの大きな特徴の一つは、参加者へのホームステイ制度です。

本大会の参加者はアメリカ・フォートワースの個人宅に2025年5月17日〜6月8日までの約3週間滞在することができます。

滞在中は、練習用のピアノが使える環境が整えられているだけでなく、食事の提供や会場までの送迎といった生活面のサポートも充実しています。

辻井さんのドキュメンタリー番組を拝見したことがありますが、ピアノの先生も同行されていて、期間中も毎日レッスンを受けて、最終チェックをしていらっしゃいました。

もし予選やクォーターファイナルラウンドで敗退した場合でも、最後まで滞在することができます。

実際、コンクールでは大会終了までの滞在を推奨しており、滞在を続ける参加者にはクライバーンが企画する様々なイベントへの参加機会が提供されます。

このような制度は、参加者が音楽を通じて、地域の人々と交流を深められる貴重な機会となっています。

まとめ

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの概要・大会スケジュール・課題曲について解説しました。

映像審査、予備予選を経て、本大会では予選〜クォーターファイナル〜セミファイナル〜ファイナルと4つのラウンドで構成されています。

大きな特徴は、自由選択曲が多く、演奏者の個性を存分に発揮できるプログラム構成となっていることです。

また、約3週間のホームステイ制度により、参加者は練習環境や生活面でのサポートを受けながら、音楽を通じて地域の人々との交流を深めることができます。

2025年5月から6月にかけて、テキサス州フォートワースで世界中の若手ピアニストたちが繰り広げる演奏の数々が楽しみですね!

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物書きピアニスト

子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。

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