ピアノの頂点を目指せ!ショパンコンクール2025完全ガイド~予選からファイナルまでの道のり~
2025年にクラシック音楽界最大の祭典、ショパン国際ピアノコンクールが開催されます。
世界中の若手ピアニストたちが繰り広げる熱戦のスケジュールと、ぴあにーず視点の見どころをお伝えします!
コンクールの全体像〜厳しい競争を勝ち抜く道のり
ショパン国際ピアノコンクールは、5年に一度、ポーランドの首都ワルシャワで開催される世界最高峰のピアノコンクールです。
コンクールの歴史の概要と魅力については、こちらの記事で解説していますのでご覧ください。
2025年で第19回を迎えるこの大会、参加者はどのような過程を経てファイナリストへと選ばれていくのでしょうか。
予備審査からファイナルまでを追いかけます。
予備審査:夢への第一歩
期間:2024年9月2日~12月15日
参加者数:制限なし
選抜人数:約160名
予備審査では、参加希望者が必要書類や演奏動画を提出します。
必要書類には
・音楽教育の修了証書および主要なコンクール受賞歴の写し
・過去3年間の主要な芸術活動を証明する書類
・教育者または著名な音楽家による、コンクール応募を支持する2通の推薦状
が含まれるので、誰でも審査を受けられるというわけではありません。
演奏動画による予備審査では、以下の演奏(計10曲)が求められます。
・24の前奏曲 Op.28 の6曲セットをa,b,cから選ぶ
a)第7番~第12番
b)第13番~第18番
c)第19番~第24番
・エチュードa,bから1曲ずつ
a) Op.10-1, 10-4, 10-5, 10-8, 10-12, 25-11
b) Op.10-2, 10-7, 10-10, 10-11, 25-4, 25-5, 25-6, 25-10
・ノクターンまたはエチュードから1曲
ノクターン Op.9-3, 27-1, 27-2, 37-2, 48-1, 48-2, 55-2, 62-1, 62-2
エチュード Op.10-3, 10-6, 25-7
・バラードから1曲
バラード第2番 Op.38
バラード第3番 Op.47
審査員は提出された動画を視聴し、技術力、音楽性、そしてショパン作品への理解度を評価します。
動画審査のため、世界中のピアニストが平等にチャンスを得られるのも、この予備審査の特徴です。
地理的・経済的な制約を超えて、純粋に演奏力で評価される点が、このコンクールの魅力の一つと言えるでしょう。
この段階で世界中から数百名の応募があるようですが、その中から約160名が予備予選に進みます。
予備予選:実力の第一次試験
期間:2025年4月23日~5月4日
参加者数:約160名
選抜人数:80名
予備予選からは、参加者が直接ワルシャワに赴き、生演奏を行います。
課される演奏は以下の通り(計5曲)です。
・エチュードからa,bから1曲ずつ
a) Op.10-1, 10-4, 10-5, 10-8, 10-12, 25-11
b) Op.10-2, 10-7, 10-10, 10-11, 25-4, 25-5, 25-6, 25-10
・ノクターン または エチュードから1曲
ノクターン Op.9-3, 27-1, 27-2, 37-2, 48-1, 48-2, 55-2, 62-1, 62-2
エチュード Op.10-3, 10-6, 25-7
・スケルツォから1曲
スケルツォ第1番 Op.20
スケルツォ第2番 Op.31
スケルツォ第3番 Op.39
スケルツォ第4番 Op.54
・マズルカから1曲
Op.24-4, 30-3, 30-4, 33-4, 41-1, 41-4, 50-1, 50-3, 56-1, 56-3, 59-1, 59-3
なお、グループa)とb)のエチュードを除いて、好きな順序で演奏することができます。
予備予選では幅広いショパン作品の演奏力が問われます。
単なる技巧の披露ではありません。
ショパンの多様な作品群から、参加者の音楽的成熟度と表現力が見極められます。
特にマズルカは、ポーランドの民族性が色濃く反映された曲であり、ショパンの本質的な理解が問われる重要な課題曲と言えるでしょう。
本大会:ファイナルへの道
1次予選:技巧と表現力の競演
期間:2025年10月3日~7日
参加者数:80名
選抜人数:40名
本大会に進んだ80名は、さらに厳しい審査にかけられます。
課題曲は次の4曲です。
・エチュードから1曲
Op.10-1, 10-2, 25-6, 25-10, 25-11
・ノクターン または エチュードから1曲
ノクターン Op.9-3, 27-1, 27-2, 37-2, 48-1, 48-2, 55-2, 62-1, 62-2
エチュード Op.10-3, 10-6, 25-7
・ワルツから1曲
Op.18, 34-1, 42
バラード または 舟唄 または 幻想曲から1曲
バラード Op.23, 38, 47, 52
舟唄 Op.60
幻想曲 Op.49
1次予選の課題曲は、好きな順番で演奏することができます。
ショパン音楽の詩情をいかに表現できるかが重要になりますね。
特にバラードや舟唄、幻想曲は、ショパンの音楽世界の深さを表現できる曲です。
参加者たちは、技巧的な難しさを克服しつつ、ショパンの内面世界をどれだけ聴衆に伝えられるかが問われます。
なお、本大会では、応募時に提出した動画の中で演奏した曲も、再度演奏することができます。
また、エチュードを除いて、予備予選で演奏した曲も再度演奏することができます。
ただし、本大会内で同じ曲を演奏することはできませんので注意が必要です。
2次予選:プログラム構成力の見せどころ
期間:2025年10月9日~12日
参加者数:40名
選抜人数:20名
40~50分の演奏時間の中で、次の曲を演奏します。
・24の前奏曲 Op.28 の6曲セットをa,b,cから選ぶ
a)第7番~第12番
b)第13番~第18番
c)第19番~第24番
・ポロネーズから1曲
Op.22, 26, 44, 53
※ただしOp.26は1番2番を連続して
・自由選択曲
作品26を除いて、2次予選の課題曲は、好きな順番で演奏することができます。
曲目の選択やプログラム構成力も重要な要素です。
この段階では、技術と表現力に加えて、コンサートピアニストとしての資質も問われます。
40分以上の演奏を構成する力、聴衆を飽きさせない演奏の流れを作る力が必要です。
特にポロネーズは、ショパンの愛国心と高貴さが表現された曲であり、参加者の音楽的成熟度が如実に表れる曲目と言えるでしょう。
3次予選:ショパン理解の深さを問う
期間:2025年10月14日~16日
参加者数:20名
選抜人数:10名以内
45~55分の演奏時間の中で、次の曲を演奏します。
・ソナタから1曲
Op.35, 58
・マズルカから全曲(同一作品番号のもの)
Op.17, 24, 30, 33, 41, 50, 56, 59
・自由選択曲
マズルカは作品番号内の順序通りに演奏しなければなりません。
ショパンの音楽性をどれだけ深く理解しているかが問われます。
ソナタは大規模な形式の中でショパンの音楽世界をどう構築するか、マズルカはポーランドの民族性をどう表現するか、そして自由選択曲では参加者独自のショパン解釈が問われます。
この段階で選ばれる10名は、もはやショパンのスペシャリストと呼んでも過言ではないでしょう。
ファイナル:栄冠を目指して
期間:2025年10月18日~20日
参加者数:10名以内
入賞者数:6名
ファイナルの課題曲は以下の通りです。
・幻想ポロネーズ Op.61
・ピアノ協奏曲 第1番 または 第2番
オーケストラとの共演が行われ、ソリストとしての資質も問われます。
幻想ポロネーズは、ショパンの晩年の傑作であり、技巧的にも表現的にも最高度の難しさを持つ作品です。
そしてピアノ協奏曲では、オーケストラとの対話を通じて、ピアニストとしての総合力が問われます。
最終的に6名が入賞し、その中から優勝者が選ばれます。
ここまで勝ち進んだピアニストたちは、技術的には甲乙つけがたいレベルにあります。
最後に問われるのは、音楽家としての個性と魅力、そして聴衆を感動させる力です。
まとめ:ショパンコンクールが音楽界に与える影響
ショパンコンクールは、単なるピアノ技術の競争ではありません。
それは、ショパン音楽の解釈と表現を巡る、深遠な音楽的探求の旅とも言えるでしょう。
このコンクールから生まれた演奏は、しばしばショパン演奏の新たな基準となります。
例えば、1980年のイヴォ・ポゴレリッチの斬新な演奏は、賛否両論を巻き起こしながらも、ショパン解釈に新しい視点をもたらしました。
また、このコンクールは若手ピアニストの登竜門としての役割も果たしています。
マウリツィオ・ポリーニ、マルタ・アルゲリッチ、クリスチャン・ツィメルマンなど、後に20世紀を代表するピアニストとなる多くの音楽家がこのコンクールから羽ばたいていきました。
2025年のコンクールでは、どのような演奏が生まれ、どのようなピアニストが世界に羽ばたいていくのでしょうか。
ショパンの音楽を通じて、新たな音楽の歴史が作られる瞬間を、ぜひ一緒に見守りましょう。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。