【速報】中川優芽花さんの演奏を聴いた感想〜本大会2次予選編 | 第19回ショパン国際ピアノコンクール
ショパン国際ピアノコンクール 本大会2次予選 3日目に、中川優芽花さんが登場しました。
演奏プログラムの簡単解説と演奏を聴いた私の感想を速報でお届けします。
「24のプレリュード Op.28」については、全曲を一挙解説します!
加えて、2次予選の結果発表と次のステップについても簡単に確認します。
本大会1次予選をサクッと振り返り
中川優芽花さんの本大会1次予選。
ノクターンOp.62-1では美しいppで絶妙な指のコントロールを披露。
3度の重音のエチュードでは、想像を超える高速で魅せ、その神業に惹き込まれました。
日本人離れしたリズム感と音楽性のワルツ第2番。
バラード第3番演奏後には拍手喝采。
さらにくわしくはこちらのブログをご覧ください。
中川優芽花さんの演奏を聴いた感想
ここからは本大会2次予選の演奏を聴いた私の感想をお話します。
なお、大会の様子はショパン国際ピアノコンクールの公式YouTubeチャンネルで配信されます。
ぜひご覧ください。
1次予選でおなじみの、舞台袖での動くイメージトレーニングです。
小さな体で抜群の表現力は、ここからはじまっています。
ピアノはシゲルカワイです!
英雄ポロネーズ 変イ長調 Op.53
「英雄ポロネーズ 変イ長調 Op.53」は、日本人トップバッターの桑原志織も演奏されました。
簡単な作品解説は桑原さんの演奏の感想記事をご覧ください。
また、牛田さんの2次予選の演奏プログラム解説記事では、さらに詳しく作品を解説しました。
ご興味のある方はこちらもあわせてご確認ください。
1次予選で聴かせていただいた中川さんのワルツ第2番が素晴らしかったので、このポロネーズも楽しみにしていました。
ちょっと緊張されていたのか、力み過ぎなタッチが気になりました。
音色が掴めず、音に集中できていないようにも感じました。
1曲目にポロネーズを持ってくるなら、英雄ではない方が良かったのかもしれませんが、そうなると時間的に厳しくなります。
1次予選でノクターンを最初に弾かれた方が多かったのは、比較的ゆっくりな曲で指慣らしをしながら、タッチのコントロールをチェックするという意味もあります。
しかし、はじめに英雄を持ってきた理由は、プログラムが終了したときにわかりました!
24のプレリュード Op. 28-1〜24
「24のプレリュード Op.28」は、1曲あたり1~2分前後の短い曲を24個つないで、長編のような起伏をつくった傑作集です。
作曲は25~29歳頃、主にパリで進み、ジョルジュ・サンドと冬のあいだを過ごしたマヨルカ島で仕上げられました。
ソナタ第2番「葬送」とも、時期が重なっています。
ショパンが尊敬してやまないJ.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」と同じく、全ての長短調24個で書かれましたが、配列も性格もまったく違います。
今大会では24曲中、7番から24番を3つのブロックに分けて6曲ずつ選択する仕組みになっています。
演奏時間を埋める「その他のショパン作品」として、全曲演奏することもできます。
中川さんは24曲全曲演奏に挑まれました。
1曲ずつ解説させていただきます。
第1番はハ長調。
アルペジオが風のように走り、左手がきらりと色を差す、出発の合図のような音楽です。
和音が明るさを増したり陰ったりというような、色の移ろいを感じます。
第2番はイ短調。
低音の規則正しい伴奏の上に、ため息のような小さな動きが胸の底に降りてくる、内省的な曲です。
ほとんど調性感がないので、当時としてはかなり斬新な作品ではなかったかと思います。
第3番はト長調。
さらさらと流れる細かな音の上で、陽だまりがきらめくような明るい表情が続きます。
軽やかな弾力から透明な輝きが見えてくるようです。
第4番はホ短調。
ショパン自身が遺言で、この曲を自分の葬儀で演奏するように指定したとされています。
静かに降りていく旋律と重い和音の歩みが重なり、短い中に深い嘆きが宿ります。
和音が半音ずつにじむ色の変化を追うと、ため息が響いてくるようです。
第5番はニ長調。
明るい調子で切り込みの効いたアクセントが次々と顔を出し、舞台がくるくる転換していく面白さがあります。
左右ともに跳躍が多く、その中にメロディーが埋まっているので難度はかなり高いです。
第6番はロ短調。
チェロの音色のような低音が深くうねり、その上に歌が重く立ち上がる、陰影の濃い瞑想曲。
エチュードOp.25-7を思わせるこの作品は、ショパンが好んでよく弾いていたらしいです。
第7番はイ長調。
製薬会社のCMソングで日本人にはおなじみの曲です。
イ長調と胃腸薬をかけ合わせたのでしょうか!?
素朴な歌がやさしく語りかける、愛おしい小品です。
第8番は嬰ヘ短調。
右手の細かな音形が止まらず走り、左手の低音が緊張をあおります。
曲の流れに身を投じつつ、和音の移り変わりを追えば筋道が見えてきます。
この曲も難度は非常に高いです。
第9番はホ長調。
低音域でたおやかな歌に耳をすますと、温かな息遣いがはっきり聴こえてきます。
重厚感の中にリズムの切れ味が光り、かっこいい曲です。
第10番は嬰ハ短調。
閃光のようなパッセージが駆け抜け、音が斜めに切り裂くたびに景色が変わります。
鋭さの中にも着地の柔らかさがあり、洗練された作品です。
第11番はロ長調。
きらめく粒が軽く舞い、涼やかな空気の中で微笑むような一曲です。
色彩のグラデーションが楽しめます。
第12番は嬰ト短調。
緊迫した和音と推進力が一気に押し寄せます。
和音の積み重ねが高まっては崩れるという連続で、難度が非常に高いです。
第13番は嬰ヘ長調。
大きなアリアのように広々と歌が伸び、伴奏が柔らかに支えます。
ノクターンのようなゆるやかな曲の中盤に、さらにゆっくりした8小節が挟まり、品格が高い作品となっています。
第14番は変ホ短調。
低音部記号(へ音記号)で書かれている作品で、冒頭から終わりまでユニゾンです。
稲妻のように疾走しつつも、細かい強弱記号をていねいに付けていくという作品です。
第15番は変ニ長調。
通称「雨だれ」として有名で、全24曲中もっとも長い作品です。
一定の音がぽつぽつと降り続け、真ん中で空が暗くなり、やがて雨脚が静かに遠のきます。
繰り返される雨粒が、場面ごとに変わる表情を見せてくれます。
第16番は変ロ短調。
火花が散るような疾走の中で、リズムが一瞬も緩みません。
立体的な熱のうねりとスピード感に圧倒されます。
こちらも難曲です。
第17番は変イ長調。
穏やかな草原に長い道が通っているような、のびやかで叙情的な作品。
主旋律の裏で溶け合う声部に耳をすますと、奥行きがふっと広がります。
第18番はヘ短調。
切り込む和音が次々と投げかけられ、短いフレーズが緊張と解放を交互に刻む、劇的な小品です。
問いかけと応えを繰り返していて、短い中に濃密なドラマが立ちあがります。
第19番は変ホ長調。
両手が三連符で絶え間なく駆け、きらめく粒が鍵盤の上で跳ね続けます。
右手と左手が呼び交わすように広い音域を渡るので、音の光が左右に走る感じがとても楽しいです。
第20番はハ短調。
和音進行だけで進む、厳かで重々しい13小節の作品です。
右手は分厚い四分音符の和音、左手はオクターブで支え、音と音のあいだに沈黙が広がります。
第21番は変ロ長調。
右手が素朴な歌をつむぎ、左手は二重音のなめらかなうねりで色を変えていきます。
左手の半音階的ににじむ内声が、曲の明るさの中にほのかな陰影を与えています。
第22番はト短調。
付点リズムが切迫感を生み、低音のオクターブが地鳴りのように曲を引っぱります。
冒頭のリズムが止まることなく押し寄せ、短い中にも嵐のような緊張が張りつめます。
第23番はヘ長調。
左手の旋律が主役で、右手の細かな十六分音符がさらさらと流れ続けます。
ヘ長調らしいやわらかな木漏れ日が歌を包んでいるようです。
第24番はニ短調。
低音で鳴りはじめる5音の音型が、最後まで執拗に脈打ち、右手はその上で切り裂くように走り、うなり、叫びます。
途中に現れる怒涛のスケールは印象的です。
超低音の強烈な3つの連打で すべての幕が閉じます。
弾き終わった後の余韻を味わってください。
40名のコンテスタントのうち、10名がプレリュードの全曲演奏に挑みます。
奇しくも、中川さんの前後がそうでした。
すぐ前の演奏者はフランスのナタリア・ミルシュタインで、エリザベートのファイナリスト!
さぁここから中川さんは、ノンストップでの演奏です。
曲の最後の音を弾くとすぐに次の曲の最初につながっていきます。
曲が進むほどにキレがよく、みずみずしいタッチが戻ってきました。
ppは柔らかく温かな響きです。
第15番「雨だれ」の魂がこもった演奏では、感極まって目に涙が!
実際中川さんの演奏に涙した方も多かったと思います。
第16番がはじまる前にハンカチで顔を拭いてラストスパートです。
パワフルで劇的な演奏は、観客のハートを掴みました。
第24番の最後の3音の中川さんの弾き方が独特でした。
多くの方は右手か左手の親指、または数本の指を使って、最大の音量で弾きます。
しかし、中川さんは、最後の左手の音を鍵盤に残したまま、さらにその3度下に無音で左手を沈め、その間の音を3回こぶしで叩くという奏法でした。
善と悪が入り混じった心に、まるでくさびを打ち込むかのような熱い音色です。
ここで燃え尽きてからの英雄ポロネーズはきついでしょう。
やはり、プログラムの終わり方としてはこの曲がベストだと思いました。
会場は大歓声・大拍手に包まれました。
中川さんは胸に手を当て、丁寧にお辞儀をされました。
ちょっとはにかんだ笑顔がかわいかったです。
次のステップ

本大会2次予選は、現地ポーランド時間で10月12日の夜までおこなわれます。
日本時間では時差が7時間あるので、10月13日の早朝までおこなわれます。
その後、審議を経て2次予選通過者が発表されます。
1次予選の際は最後のコンテスタントの方が演奏を終えて、1時間後くらいに結果が発表されました。
前回までの大会と比較するとかなり短時間での発表で驚きましたが、2次予選以降も演奏終了後まもなく発表される可能性があります。
2次予選の通過者は20名です。
そして、3次予選は10月14日から3日間おこなわれます。
ファイナルに進むことができるのは10名です。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。











