【最終決戦】ファイナル特集!日本人ピアニストの演奏時間と協奏曲解説〜亀井聖矢さんは戦友「サン=サーンス第5番」〜エリザベート王妃国際音楽コンクール2025
エリザベート王妃国際音楽コンクール ピアノ部門のファイナルがいよいよ開幕します!
5月26日(月)〜31日(土)までの6日間、ベルギーのブリュッセルでおこなわれます。

289名もの応募者から始まり、第1次予選へは70名が合格しましたが、10名棄権し60名に。
セミファイナルには24名合格しましたが2名棄権し22名に。
棄権者が続出する過酷なコンクールの長い道のりを経て、ファイナルに進出したのはわずか12名です。
ファイナルには日本人ピアニストが4名も選ばれるという快挙を達成しました!
吉見友貴さん、桑原志織さん、亀井聖矢さん、久末航さんの4名が、コンクール優勝に向けて最後の挑戦に臨みます。
今回は、ファイナルの演奏スケジュールに加えて、ファイナリスト全員が取り組む新作課題曲および日本人ファイナリストが選択している協奏曲を解説していきます。
ファイナルの概要
ファイナルでは、各出場者が2曲を演奏します。
1曲目はファイナリスト共通の新作課題曲「Music for the Heart」です
2曲目は各ファイナリストが選曲した協奏曲です
1日2名ずつ演奏し、オーケストラは大野和士氏指揮のブリュッセル・フィルハーモニックが担当します。
エリザベート独特のシステムとして、ファイナリストたちはエリザベート王妃音楽チャペルに演奏日順に隔離され、そこで新作課題曲を1週間かけて仕上げます。
外部との接触が禁じられ、ピアノと向き合う1週間は、彼らにとって大きな挑戦となるでしょう。
詳細については、過去のこちらの記事をご覧ください。
新作課題曲「Music for the Heart」
今回の新作課題曲は、ベルギーの作曲家クリス・デフォート氏による「Music for the Heart」です。
約10〜15分の作品で、ピアノと管弦楽のための協奏曲形式となっています。
この曲が世界で初めて演奏されるのは5月26日、吉見友貴さんのお名前が初演者として刻まれます!
ファイナリスト全員が演奏するため、ピアニストごとの聴き比べも楽しみですね!
日本人ファイナリストの演奏スケジュールと協奏曲解説
吉見友貴さん
吉見さんはファイナル初日の1番手です。
日本時間で5月26日(月)深夜3時15分からです。
選択された協奏曲は
プロコフィエフ作曲「ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26」
ロシアの作曲家、プロコフィエフの30歳頃の作品で、ロシア的情感と西欧的洗練、古典的形式と近代的響きを巧みに融合させた傑作です。
1921年、亡命中のアメリカで完成され、自らの演奏で一躍注目を集めました。
亡命途中に日本に滞在していたこともあり、日本で見聞きしたリズムや日本音階も影響を与えています。
曲は三楽章構成で、静かな序奏から始まる第1楽章は、エネルギッシュでユーモアある展開が魅力。
第2楽章は親しみやすい主題による5つの変奏で構成され、幻想的・ジャズ的な要素も織り交ぜられています。
終楽章ではピアノとオーケストラが緊迫感ある対話を繰り広げ、圧倒的なエネルギーで締めくくられます。
音の表情が目まぐるしく移り変わり、魅力満載の本作品は、20世紀を代表するピアノ協奏曲のひとつです。
桑原志織さん
桑原さんは、セミファイナル5日目の1番手です。
日本時間で、5月30日(金)深夜3時15分からです。
選択された協奏曲は
ブラームス作曲「ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83」
ブラームスが40代後半の円熟期に書き上げたこの協奏曲は、1881年に自らのピアノ独奏で初演されました。
この作品は、全4楽章からなる長大な構成で、演奏時間も50分あります。
ピアノ協奏曲というよりピアノ付きの交響曲というような、スケールの大きさを感じさせます。
第1楽章は堂々としたホルンの序奏に始まり、重厚さの中にも叙情性が漂うブラームスらしい世界です。
第2楽章は緊張感あふれる情熱的なスケルツォ。
第3楽章では独奏チェロの旋律が心を打ち、穏やかさと深みを兼ね備えています。
終楽章は軽やかで牧歌的な雰囲気を持ち、全体を優しく包み込んで終わります。
技巧的にも難度が高く、ブラームスの構成力と詩情が見事に融合した傑作です。
亀井聖矢さん
亀井さんは、セミファイナル最終日の1番手です。
日本時間で、5月31日(土)深夜3時15分からです。
選択された協奏曲は
サン・サーンス作曲「ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 Op.103」
フランスの作曲家サン=サーンスが、61歳で書いた作品です。
この曲はサン=サーンスのエジプト滞在中に作曲され、アラブ音楽や民謡など異国の要素が色濃く反映されているため「エジプト風」という愛称で知られています。
ちょうどドビュッシーらによる東洋趣味が芽生え始めた頃で、エキゾチックなエジプト風も、聴衆に強い印象を与えました。
全3楽章で構成され、第1楽章は清々しく、旋律の美しさと巧みな構成が光ります。
第2楽章はこの曲の核で、アラビア音階やエジプト楽器の響きなどを取り入れた幻想的な楽章です。
第3楽章は旅の終盤を思わせる活力に満ちたフィナーレで、ピアノ技巧が炸裂します。
この協奏曲の魅力は、異国情緒と洗練された古典的構成が見事に融合している点で、聴き応えのある作品として高く評価されています。
久末航さん
久末さんは、セミファイナル最終日、亀井さんに続く2番手です。
日本時間で、5月31日(土)深夜4時15分からです。
選択された協奏曲は
ブラームス作曲「ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83」
桑原さんと同じくブラームスの第2番を選んだ久末さん。
同じ曲でも、久末さんならではの解釈が聴けるでしょう。
聴き比べが楽しみですね!
協奏曲の選曲状況
12名のファイナリストの選曲を見ると、プロコフィエフの第3番が最も人気で、吉見友貴さん他、計4名から選ばれています。

ブラームスの第2番は桑原さん、久末さんを含めて計3名、ラフマニノフの第3番は計2名です。
その他、プロコフィエフの第2番、シューマン、イ短調、サン=サーンス第5番と、バラエティに富んだ選曲。
亀井さんは長年磨き上げてきた得意のサン=サーンス第5番で最終決戦に臨みます!
視聴方法と結果発表について
ファイナルの模様はエリザベート王妃国際音楽コンクールの公式サイトでライブ配信されます。
また、各演奏後、動画はアーカイブとして公開されます。
エリザベート王妃国際音楽コンクールの公式サイトはこちらからご確認ください。
結果発表は最終日の5月31日(土)、全演奏終了後におこなわれます。
日本時間では6月1日(日)の早朝になる見込みです。
正式な表彰式は6月3日(火)に開催されます。
まとめ
エリザベート王妃国際音楽コンクールは、ショパン国際ピアノコンクールと並ぶ世界最高峰のコンクールの一つです。
12名のファイナリストのうち4名が日本人という状況は、まさに日本のピアノ教育と若手ピアニストたちの実力を世界に示すものでしょう。
そして何より、吉見友貴さん、桑原志織さん、亀井聖矢さん、久末航さんの4名は、それぞれが独自の音楽性と表現力を持っています。
その演奏がどのように評価されるか、そして誰が優勝の栄冠を手にするのか、非常に楽しみです。
結果は判明次第、速報でお伝えする予定です。
日本人ピアニスト4名の健闘を心から応援しましょう!
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。