亀井聖矢さん｜ショパン予備予選 全演奏曲 徹底解説！【ショパンコンクール2025】

ショパン国際ピアノコンクールの予備予選で注目の日本人ピアニスト「亀井聖矢」さんは、初日の4月23日（水）日本時間 17:30に登場されます！

この記事では、亀井聖矢さんの予備予選プログラムを徹底的に解説し、ショパンの魅力と演奏の見どころをお伝えします。

予備予選プログラム

亀井聖矢さんは、予備予選で次の5曲を演奏されます

エチュード Op.25-11 イ短調「木枯らし」
エチュード Op.10-2 イ短調
ノクターン Op.27-1 嬰ハ短調
スケルツォ Op.54 ホ長調
マズルカ Op.59-3 嬰ヘ短調

それぞれの曲について詳しく見ていきます。

エチュード Op.25-11 イ短調 

別名「木枯らし」は、ショパンの26歳頃の作品です。

この曲は冒頭はゆったりとした旋律の序奏ですが、その後一転して嵐のような急流の音型がピアノ全体を駆け巡ります。

右手は急速な音階・アルペジオを連ね、左手は大きく跳躍するという、まさに冬の木枯らしが吹き荒れる情景を連想させます。

「木枯らし」の愛称は後世の人が付けたもので、ショパン本人によるものではありません。

技巧的にも非常に難しく、ドラマティックな展開を持つこの作品は、故郷への深い想いと孤独を抱えているショパンの感情の激しさと詩的な美しさを同時に感じさせる名作として、多くの人々に愛されています。

なお、23名の日本人ピアニストの中で、8名の方がこの曲を選択されています。

エチュード Op.10-2 イ短調

演奏時間はわずか1分ほどですが、卓越した技巧と音楽的美しさが詰まっています。

この曲の特徴は、右手の中指・薬指・小指という弱い指で、なめらかに速い半音階を弾き続けるという非常に高度な技術にあります。

しかも同時に、親指と人差し指で内声の和音も弾かなければならず、演奏者には繊細なコントロールが求められます。

これはピアノ奏法の中でも極めて難度が高く、弱い指を酷使するため制御が難しいです。

僅かな乱れで音形が崩れてしまう危険が常に伴い、本番で弾くには相当な自信と勇気がいります。

実際、今回のコンクールでこの曲を選択した日本人ピアニストは亀井さん、お一人です。

メロディーらしい旋律は少ないものの、絶え間なく流れる音の動きそのものが美しく、まるで静かなさざ波のような印象です。

ショパンはこの曲において「常にレガートで」と繰り返し指示し、ペダルを最小限にとどめ、指だけでなめらかに演奏することを求めました。

祖国を離れパリで新たな道を歩み始めたショパンの、技巧と詩情を追い求める姿勢がにじむ一曲です。

ノクターン Op.27-1 嬰ハ短調

祖国ポーランドを離れ、パリで名声を高めつつあった25歳頃に作曲された作品です。

静けさの中に、繊細な感情と情熱が込められたこの曲は、ショパンが「ピアノの詩人」と呼ばれるゆえんを感じさせてくれます。

最初で最後となった家族との再会や、愛や孤独といった複雑な感情が、この音楽に影を落としているとも言われます。

曲は三部構成で、冒頭はせつなく柔らかな旋律が静かに流れますが、中間部では雰囲気が一変し、激しい感情がほとばしるような力強い展開になります。

その中に故郷ポーランドの舞曲マズルカを思わせるメロディーも現れます。

「静」と「動」が交差するドラマがあり、聴く人の心を深く揺さぶる作品です。

なお、23名の日本人ピアニストの中で、2名の方がこの曲を選択されています。

スケルツォ Op.54 ホ長調

4曲あるスケルツォの中で最後の作品であり、唯一長調で書かれた明るく優雅な印象の曲です。

難度は4曲中で最も高いです。

この作品が生まれたのは32歳頃ですが、ショパンは体調不良に悩みつつも、作家ジョルジュ・サンドとの穏やかな暮らしの中で創作に打ち込んでいました。

「バラード 第4番 Op.52」や「英雄ポロネーズ Op.53」など、数々の名作を同時期に生み出しています。

軽快で優雅な主題と、幻想的で心の奥底をそっと語るような中間部、そしてめまぐるしい転調を重ねながらの輝かしい終結部という構成で、静けさと充実感がにじみ出るような感情の美しさを感じさせます。

激しい感情表現ではなく、内に秘めた優しさと洗練されたユーモアが魅力のこの曲は、ショパン晩年の成熟した詩的世界を感じさせる一曲です。

23名の日本人ピアニストの中で、スケルツォ枠でもっとも多い12名の方が、この曲を選択されています。

マズルカ Op.59-3 嬰ヘ短調

ショパンの晩年にあたる35歳頃の作品で、作品59の「3つのマズルカ」のうちの第3曲です。

ジョルジュ・サンドと暮らしていましたが、サンドの長男との確執が深まり、後に破局を迎えます。

家庭不和の中、祖国ポーランドを離れた亡命生活で、マズルカは彼の心の拠り所でした。

この曲にも、故郷への深い想いが込められています。

短調で始まるこの曲は、短い中にさまざまな感情が詰まっており、冒頭は荒々しく、どこか怒りにも似た力強さがあります。

中間部では一転して穏やかで優しい旋律が現れ、平和な過去の記憶をそっとなぞるようです。

最後は長調へと転じ、光が差し込むような希望を感じさせる終わり方をします。

技術的には超難解ではないものの、内面の揺れ動く感情を繊細に表現する力が求められます。

静かな詩情と郷愁がにじむこの曲は、ショパンの人間らしい優しさや哀しみが伝わる一曲です。

23名の日本人ピアニストの中で3名の方がこの曲を選択されています。

まとめ

亀井聖矢さんの選んだプログラムは、ショパンの多面性を表現できる充実した内容ですね。

圧倒的な技巧を持つ亀井さんが、ショパンの繊細な詩情をどう表現されるのか。

亀井さんの演奏を通して、ショパンの音楽の奥深さを味わいましょう。

亀井さんの演奏時間は日本時間で4月23日（水）17:30からです。

亀井聖矢さんの演奏を応援しましょう！

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