【保存版】本選(ファイナル)の課題曲・ピアノ協奏曲とは?~ショパン国際ピアノコンクール
ショパン国際ピアノコンクールの本選(ファイナル)では、ショパンが作曲した2曲の協奏曲から1曲を選んで演奏します。
このピアノ協奏曲についてわかりやすく説明します♪
協奏曲とは?
ピアノやヴァイオリン、フルートなどの独奏楽器、または2つ以上の独奏楽器とオーケストラ(管弦楽)のために作られた作品です。
コンチェルトともいい、その語源には「競い合う」と「一致させる」の2つの対照的な意味があります。
協奏曲はまさにこの二面性を持っています。
独奏楽器がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏するカデンツァがあるのも特徴です。
ピアノ協奏曲 第1番 作品11(ホ短調)
カルクブレンナーに献呈
ドイツ出身のピアニスト、作曲家であるフリードリヒ・カルクブレンナーに献呈されました。
カルクブレンナーは、ショパンやリストが現れるまではヨーロッパで最も有名なピアニストでした。
ショパンが一時、弟子入りを考えていたほどの人物です。
1830年の10月11日、ワルシャワからウィーンに移り住む直前の演奏会において、ショパン自身のピアノ独奏により初演されました。
その後、1832年パリデビューでの演奏会でも好評を博したために、1833年に出版されることになりました。
ショパンがパリで作曲家としてデビューするにあたり、尽力してくれたカルクブレンナーに感謝を込めて献呈したそうです。
ピアノ協奏曲 第1番の特徴
1830年、ショパン20歳のときの作品で、故郷ワルシャワへの告別と、新たな土地への飛翔の意味が込められていると言われています。
結果的にショパンは再びポーランドの地を踏むことはないので、感慨深いです。
第1番とありますが、実際には第2番の方が先に作られていました。
この曲を第1番として先に出版したのは、ショパンがこの曲を前作より自信作だとみなしていたからだと考えられます。
第1番は第2番よりも技巧的で、楽曲の規模も大きくなっています。
この曲の自筆譜はほとんど現存していないので、オーケストレーションについては、ショパン自身がすべて書いたかどうかは解明されていません。
ピアノ独奏部に対してオーケストラの部分が貧弱であるとの批判もありますが、ピアノの技巧が素晴らしいことや、旋律の美しさ華やかさはショパンの特徴を多く伝えています。
なお、ショパンのピアノ協奏曲には、カデンツァがありません。
しかし、華麗なパッセージが曲中にちりばめられており、カデンツァと同じくらいの効果がある、非常に美しく華やかな作品となっています。
演奏時間 約43分
第1楽章
Allegro maestoso (アレグロ・マエストーソ~速く、威厳を持って)ホ短調
オーケストラの演奏が4分30秒ほどあり、その後ピアノが加わり終始華やかに曲が展開されます。
ピアノが加わってからは主に主導権はピアノの方にあり、きらびやかです。
第2楽章
Romanze, Larghetto (ラルゲット~やや遅く)ホ長調
ロマンツェ(ロマンス)は美しい旋律を持つ叙情的な曲のことを言います。
初演当時のテンポ指示は「Adagio(アダージョ~ゆっくりと静かに)」でしたが、出版に際してもう少し遅い「ラルゲット」に変更されました。
弱音器付きの弦楽器の序奏に続いて、ピアノによるノクターンのような美しい主題が現れます。
ショパンが手紙でこう述べています。
「新作のコンチェルトの2楽章は、ロマンス風の、静かで、憂いがちな、それでいて懐かしいさまざまな思い出を呼び起こすようなある場所を、心を込めて、じっと見つめているようなイメージだ。
美しい春の夜に月光を浴びながら瞑想するように。」
切れ目なく終楽章へ続きます。
第3楽章
Rondo, Vivace (ロンド風、ヴィヴァーチェ~生き生きと速く)ホ長調
短い序奏の後、ポーランドの民族舞踊の1つ「クラコヴィアク」を基にした華やかな主題が登場します。
ロンドは主題部と挿入部が交替しつつ数回繰り返される形式ですが、この曲ではロンド主題はすべてピアノが担当し、オーケストラが演奏することは一度もないことが特徴となっています。
途中にユニゾンの民謡調の旋律を登場させ、威厳のあるクライマックスに導きます。
コーダは技術的にも難易度が高く、最大の見せ場の一つとなっています。
ピアノ協奏曲 第2番 作品21(ヘ短調)
ピアノ協奏曲 第2番の特徴
ショパンはパリでも作曲家としての地位を築きつつありましが、ソロの曲がほとんどだったので、更なる成功のためには大規模な「協奏曲」が必要だと感じていました。
この曲は第2番とありますが、実際には第1番より先に作られていたので、ショパンが19歳のときに最初に作ったピアノ協奏曲ということになります。
1829年から着手し、1830年3月11日にショパン自らのピアノ独奏により初演されました。
ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作(映画、戦場のピアニストで有名)には、この曲の第1・第3楽章のモチーフが使われています。
実はこの協奏曲に先駆けて、ショパンは「ラ・チ・ダレム・ラ・マーノによる変奏曲作品2」というオーケストラを伴った作品を発表していました。
それを聴いたシューマンが「諸君、天才だ、脱帽したまえ」とドイツの音楽誌にショパンを紹介したという話は有名です。
演奏時間 約33分
第1楽章
Maestoso(威厳を持って)ヘ短調
訴えかけるようなせつない美しい旋律からはじまります。
独奏ピアノの技巧的なパッセージがふんだんにあります。
第2楽章
Larghetto(ラルゲット~やや遅く)変イ長調
ショパンの初恋の人、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを込めた作品であると友人宛ての手紙に書いています。
この楽章がまずはじめに書きあがったようです。
ノクターン風の主題がピアノによって歌われ、様々な装飾を駆使して旋律を彩っていきます。
第3楽章
Allegro Vivace (アレグロ・ヴィヴァーチェ~生き生きと速く)へ短調
ポーランドの民族舞踊であるマズルカのリズムをもとに作られています。
中間部はコル・レーニョ(弓の木の部分で弦を叩く)弦楽器の奏法があります。
ピアノもユニゾンとなることで、より民族的音楽の効果を高めています。
ショパンコンクールでの選曲エピソード
ショパンコンクールでは第1番を選曲するコンテスタントが多く、この曲を選んだコンテスタントが数多く優勝しています。
第2番を演奏して優勝したコンテスタントは、全17回大会のうち、第1回のヤーコフ・ザークと第10回のダン・タイ・ソンのお二人です。
第17回では優勝のチョ・ソンジンが第1番、準優勝のシャルル・リシャール=アムランが第2番を選択しましたが、順位を分けたのは協奏曲の選曲だったのは?と言われています。
第7回のアルゲリッチも第2番を用意していましたが、周囲のアドバイスで直前に第1番に変更したそうです。
すぐに弾けるのが次元が違いますね!
その他にも第12回の横山幸雄さん(1位なしの3位)、第13回のアレクセイ・スルタノフ(1位なしの2位)も第1番を選んでいたら優勝できたかもしれないと言われています。
1番はピアノが主導権を取れますが、2番はアンサンブルの要素が多く、短時間のオケ合わせでは苦労されるようなので、ピアニストの実力だけの問題ではないようですね。
まとめ
ショパン国際ピアノコンクールの本選(ファイナル)での課題曲、ピアノ協奏曲 第1番 作品11(ホ短調)とピアノ協奏曲 第2番 作品21(ヘ短調)について解説しました。
実際に書かれたのは第2番が先でした。
第1番の方が規模が大きく、 華やかで演奏効果の高い作品なので、コンクールには好まれます。
第2番を演奏して優勝したコンテスタントは、全17回大会のうち2人だけでした。
第2番はオケとの兼ね合いが難しいので不利なのかもしれません。
聴衆の一人としてはどちらの曲も聴きたいですね♪
そういえば、のだめも世界デビューのためミルヒーが選んだ曲はピアノ協奏曲第1番だったことを思い出しました。
ピアニスト主導で演奏できるのは、のだめちゃんにピッタリです。
【ショパンコンクール】ファイナルの課題曲「ピアノ協奏曲」を徹底解説!反田恭平さん・小林愛実さんの選曲は?
簡潔に動画でご説明しています。
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