審査方法~第18回ショパンコンクール大解剖④
『ピアノの森』を読まれた方はご存じだと思いますが、ショパン国際ピアノコンクールの審査方法は厳正で、独特かつ公平です。
その審査方法や平均点の出し方についてまとめました。
最後の方に簡潔にまとめたPianeysの動画もあります♪
二段階審査
まず、ざっくりと「YES」「NO」での回答です。
つまり、もう一度演奏を聴いてみたいかどうかです。
とてもよい演奏だったけど新鮮味がないとか、あまり魅力的でない場合は「NO」になってしまうかもしれません。
次に、1点~25点までの点数での回答です。
いくら「YES」でもう一度聴いてみたいと思っても、その演奏が15点ではアウトです。
「YES」を付ける限りは18点以上の点数であることが求められています。
つまり、「YES」は18点~25点、「NO」は1点~17点までということになります。
演奏者の平均点の求め方
平均点の出し方にも工夫がありました。
この方法を考えた方はすごいと思います!!
1.審査員の評価したすべての点数を足して平均点を出す
ちょっとざっくりやってみましょう。
下記は私が勝手に作った架空の演奏者の評価です。
審査員は2021年7月に発表された18人としました。
A先生 | 18点 | YES |
B先生 | 20点 | YES |
C先生 | 17点 | NO |
D先生 | 24点 | YES |
E先生 | ノーカウント | ノーカウント |
F先生 | 16点 | NO |
G先生 | 20点 | YES |
H先生 | 20点 | YES |
I 先生 | 19点 | YES |
J先生 | 14点 | NO |
K先生 | 22点 | YES |
L先生 | 13点 | NO |
M先生 | 20点 | YES |
N先生 | 21点 | YES |
O先生 | 18点 | YES |
P先生 | 20点 | YES |
Q先生 | 19点 | YES |
R先生 | 18点 | YES |
E先生は演奏者の師匠なので採点できません。
例えばこのような点数の場合、合計点は317点で17人で割ると四捨五入で18.65点になります。
なお、審査員は自分の評価シートに署名することが義務付けられています。
2.平均点より3点以上離れている点数は調整
まず、平均点の18.65点より3点以上離れている先生を見つけましょう。
18.65+3の21.65点以上には、D先生の24点とK先生の22点があります。
また、18.65-3の15.65点以下には、J先生の14点とL先生の13点があります。
この4人の先生の点数が調整対象となります。
D先生、K先生の点数は平均点に3点を加えた21.65点に引き下げられ、J先生、L先生の点数は平均点から3点を引いた15.65点に引き上げられます。
極端な話、ある先生が1点しか付けなかった場合でも、平均点が18.65点だった場合は15.65点になるというわけです。
再び合計点を出すと320.6点となり、新しい平均点は四捨五入で18.86点になりました。
この演奏者の点数は18.86点というわけです。
3.「YES」の数の多い順から検討
演奏者については、名前も演奏順もわからない状態でシートが並べられます。
「YES」の数と評価の点数を参考にしながら次に進む演奏者が決まります。
この演奏者は「YES」を13票獲得しました。
審査員の中に師匠がいたために1票少なくなっていますが、合格かどうかギリギリの場合には協議されます。
協議の結果、多少人数の増減もあります。
本選での「YES」「NO」ライン
予備予選と採点方法は同じですが、「YES」の最低点が違います。
予備予選合格ライン「YES」18点以上
1次予選合格ライン「YES」18点以上
2次予選合格ライン「YES」19点以上
3次予選合格ライン「YES」20点以上
合格者の発表
アルファベット順で公表されます。
点数など審査結果については開示されません。
コンクールが進行している間、審査会議は機密で、審査員は演奏者についての意見を公表しない義務があります。
ファイナリストの審査方法
ファイナリスト10名を選ぶ際には、少し審査方法が変わっています。
上記の方法ですんなり決まらない場合、審査段階で9位~12位の名前を審査員が知ることができます。
ただし、審査員の過半数の同意が必要です。
ファイナリストの審査は文字通り最終審査なので、「YES」「NO」での回答はありません。
10点満点での評価となりますが、これまでの全ての演奏も考慮されるということです。
6位まで順位が付けられます。
まとめ
ショパン国際コンクールの審査方法についてお伝えしました。
もう一度演奏を聴いてみたいかどうかの「YES」「NO」での回答と、点数による評価ですが、その方法は厳正かつ公平な審査方法だと思います。
審査員の好みもあるので、とてもよい調整方法だと思います。
なお、審査方法の情報は、 the 18th Chopin Piano CompetitionのHP Competition rulesなどを翻訳しました。
【ショパンコンクール】審査方法を徹底解説!YES NO方式と点数の算出方法がわかります
簡潔に動画でご説明しています。
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子どもから大人までピアノ指導する傍ら、本サイト「ピアノサプリ」を開設し運営。【弾きたい!が見つかる】をコンセプトに、演奏効果の高いピアノ曲を1000曲以上、初心者~上級者までレベルごとに紹介。文章を書く趣味が高じて、ピアノファンタジー小説「ピアニーズ」をKindleにて出版。お仕事のお問い合わせはこちらからお願いします。